国家
定義
法学・政治学で用いる国家(こっか、英:state、独:Staat、仏:état)は、一定の土地と人民に対し排他的な支配権を有する集団である。法学上は、以下の「国家の三要素」を持つものを国家とする。これは、ドイツの法学者・国家学者であるゲオルク・イェリネックの学説に基づくものであるが、今日では、一般に国際法上の国家の承認要件として認められている。
領域(Staatsgebiet:領土、領海、領空)- 一定に区画されている。 人民(Staatsvolk:国民、住民)- 恒久的に属し、一時の好悪で脱したり復したりはしない。 権力(Staatsgewalt)ないし主権- 正統な物理的実力のことである。この実力は、対外的・対内的に排他的に行使できなければ、つまり、主権的で(souverän)なければならない。
つまり、このモデルにおいては、国家とは、権力が領域と人民を内外の干渉を許さず統治する存在であると捉えられているのである。領域に対する権力を領土高権(Gebietshoheit)、人民に対する権力を対人高権(Personalhoheit)という。国際法上、これらの三要素を有するものは国家として認められるが、満たさないものは国家として認められない。この場合、認めるか認めないかを実際に判断するのは他の国家なので、他国からの承認を第四の要素に挙げる場合もある。
なお、以上のような要件を満たさない支配機構や政治共同体も存在しうる。上記の国家は近代の歴史的産物であり、それ以前には存在しなかった。例えば前近代社会において、しばしば多くの国家が多様な自治的組織を持つ多種多様な人間集団、すなわち社団の複合体として成立し、中央政府機構はこれら社団に特権を付与することで階層秩序を維持していた。こうした国家体制を社団国家と称し、日本の幕藩体制やフランスのアンシャン・レジームが典型例として挙げられる。
こうした社団国家においては個々の社団が中央政府機構からの離脱や復帰を行う現象が見られ、また江戸時代の対馬藩が日本と李氏朝鮮に両属の態度をとっていたように国民の固定化は不完全であった。当然、社団の離脱、復帰に伴い領域も変動しえた。
さらに権力に関しても、幕藩体制における各藩が独自の軍事機構を持ち、幕府の藩内内政への干渉権が大幅に制限されていたように、決して主権的ではなかった。
日本語では、国と同義にも用いられる。この場合、一定の領域内に住む人間集団が作る政治的共同社会を指す。通常国民と訳される nation は、団体的側面を強調したり、他 nation との関係を強調したりする文脈で用いられるときには、国家と訳すことがある。
国家概念の起源と方向性
国家を指す西欧語の起源はイタリア語の stato で、状態という意味だが、マキャベリが、lo stato「かかる(その、こうした)状態」を 「現在の支配体制」という意味に転用して今日の内容を持つようになった。マキャベリは、政治共同体がはじめにあり、次いでそれに対応した支配機構が作られるというそれまでの政治思想の想定を、近世ヨーロッパの現実に即して逆転させた。マキャベリは「君主論」において国家における君主の有様を論じ、「政略論」においてローマ史に即して共和制国家における国民について論じた。まず支配機構たる国家があり、それが各々の力に応じて土地と人民を領有する。このようにして、政治共同体の要素をそぎ落として把握した支配機構が、国家である。漢語の国家は、諸侯が治める国と卿大夫が治める家との総称で、特定の境界を持つ支配地・支配民を意味した。対語は、いかなる限定もされない支配地と支配民、つまり天下である。支配機構を出発点にする方向性は西欧の国家概念と同じだが、支配の対象である土地と人民を含む点で、微妙なニュアンスの違いを持つ。西欧語と同じく支配機構に限って論じる場合も多いが、日本産の政治思想では(上から統制することに重点をおきつつも)政治共同体として国家を扱うことも多い。
国家と対立するテロあるいはテロ国家の概念がイラクにおける戦争や、アメリカ同時爆破テロ以降問題になりつつある。
様々な国家論
多元的国家論 階級国家論(マルクス的国家論) 有機的国家論(国家有機体説) 夜警国家論(夜警国家) 福祉国家論(福祉国家) 行政国家 兵役国家 王権神授説