ベクトル
ベクトルとは、線型代数学の根底をなす概念の一つである。
最もおおざっぱな言い方では、ベクトルとは大きさと向きを持ったもので、スカラーに対して使われる言葉であり、平面上や空間内の矢印(有向線分)として幾何学的にイメージされる。例えば、速度や加速度、力はベクトルである。この概念は、座標系を指定して、解析的な表示を与えることにより、自然に数ベクトルの概念へと導かれる。
線型代数学では、矢印のベクトルや数ベクトルはもっと抽象化されて、ベクトルとは単にベクトル空間の元のことになる。つまりベクトルには和とスカラー倍が定義されていることだけが問題とされる。しかし、基底を媒介にして、一般的なベクトルは数ベクトルとして扱うことが出来る: つまり、基底 e1, e2, ..., en を固定したとき、任意のベクトル v は基底の1次結合として
この記事では、主に数ベクトル(空間)について扱い、部分的に一般のベクトル空間への抽象化に言及する。一般の場合についてはベクトル空間も参照せよ。
数ベクトル
数ベクトルは、数(実数や複素数、有理数などから一種類選んで固定する)を並べたものである。
例
横に並べた数ベクトルを横ベクトルまたは行ベクトル。縦に並べた数ベクトルを縦ベクトルまたは列ベクトルと呼ぶ。上の例では、a は行ベクトル、b は列ベクトルである。 数ベクトルは n*1 もしくは 1*n の行列でもある。 数ベクトルの要素が全て 0 の数ベクトルを零ベクトルと呼ぶ。零ベクトルでない数ベクトルを非零ベクトルと呼ぶ。 数ベクトルは、しばしばその成分を座標と見ることにより、有向線分(矢印)を用いて幾何学的ベクトルとして表現される。
数ベクトルの和、差
同じ次元の数ベクトルの和(差)を、要素同士の和(差)と定める。
例
また、a, b がどんなものであっても a + b = b + a が成り立っていることに注意されたい。
数ベクトルのスカラー倍
c を普通の数(スカラー)とする。ベクトルのそれぞれの要素を c 倍することで、スカラー倍が定義できる。
例
数ベクトルの内積
同じ次元の数ベクトルの内積を、要素同士の積の総和と定める。 a と b の内積を a · b と表現する。 内積は転置行列を用いると