チベット自治区
チベット自治区(チベットじちく)中国人民政府が、チベットの領域を狭く印象づけるため、チベット民族の民族区域自治単位に対して用いる日本語の呼称。
中国人民政府が設置した省規模の「民族区域自治」の単位としては、内蒙古自治区、広西壮族自治区、西蔵自治区、新疆維吾爾自治区、寧夏回族自治区の五つがある。
これらの呼称について、広西、新疆、寧夏は『地名+「民族自治」を行う「主体民族」の名称』というパターンであるのに対し、内蒙古、西蔵はいずれも地名である。
内蒙古はモンゴルのうち、南部の中国領となっている部分に対する呼称で、清朝時代、北京を基準としてモンゴルの国土を「外蒙古」「内蒙古」と区分したのを踏襲した呼称である。「外蒙古」の部分は1913年に中国から独立し、現在はモンゴル国として国連加盟国となっていが、人民政府がモンゴルの中国領部分についてことさら「内」を冠した呼称を用いるのは、モンゴル国もまた中国に帰属すべきであるという主張を暗に込めたものである。台湾の国民政府も、漢人を主体とする政権としてモンゴル国に対する上記感情を中国人民政府と共有しており、1990年代なかばまで、モンゴル国を中国領に含めた中国地図を、現行の中国地図として作成、発行していた。
西蔵は、チベットのうち、西南部の三分の一程度を占める部分である。中国人民政府は、現在、チベットのほぼ全域を統治下においているが、この領域を統一的にチベットの「民族区域自治」単位とするのではなく、五つの省にまたがる形に分断し、チベット人の民族自治の単位としては西蔵部分のみを宛がうという政策をとっている。
中国政府が、この自治区に対する外国語の正式呼称として、英語で「Tibetan Autonomous Region」、日本語で「チベット自治区」などと称するのは、この政策にもとづき、西蔵部分のみを「チベット」として印象づけようとする意図によるものである。