イラク日本人人質事件
イラク日本人人質事件(イラクにほんじんひとじちじけん)は、フセイン政権崩壊後のイラクにおいて2004年4月に相次いで発生した武装勢力による外国人の誘拐・拘束事件のうち、日本人が対象とされた事件。 7日に日本人3人が武装グループに誘拐され、人道復興支援の名目でサマーワ に駐留する自衛隊の撤退を要求するための人質とされた。 3人は15日に無事解放されたが、14日からは、新たに2人の日本人ジャーナリストが拘束され、17日に解放された。
経過(日本時間)
4月7日 - 3人の日本人(ボランティア活動家〔女性、34歳〕、報道写真家〔男性、32歳〕、NPO団体代表〔男性、18歳〕)が、ヨルダンのアンマンから陸路イラク入りしてバグダードに向かう途中、「サラーヤー・アル=ムジャヒーディーン」(ジハード戦士旅団)を名乗る武装グループに誘拐された。 4月8日 - カタールの衛星テレビ局、アルジャジーラが日本人3人を武装グループが拘束している映像を流した。犯人から送られた映像に同封された手紙には『放送されてから3日以内に自衛隊をイラクから撤退させなければ3人を生きたまま焼き殺す』と書かれていた。同日夜、福田康夫官房長官が緊急会見し『(自衛隊が)撤退する理由はない』と述べた。 4月10日 - 小泉純一郎首相が自衛隊を撤退する意思がないことを明らかにするとともに、人質の救出に政府として全力をあげるよう指示を出した。また、人質となった日本人3人の家族が東京でアルジャジーラの取材に応えて人質解放を訴え、その映像が中東全域に放送された。 4月11日 - 武装グループからアルジャジーラにあてて、『イラク・ムスリム・ウラマー協会の求めに応えて3人の日本人を24時間以内に解放する』との内容のファックスによる声明が届き、一時楽観ムードが漂ったが、期限内の解放は実現されなかった。 4月13日 - イタリア国籍の4人が別の武装グループに拘束され、自衛隊に続いてイタリア軍に対してイラクから撤退が要求された。この間、外国人の人質事件が相次ぎ、占領行政を行う連合国暫定行政当局(CPA)の発表では12か国、40人前後が人質に捕われたとされる。 4月14日 - 新たに、日本人ジャーナリスト2人がバグダッド西方で何らかの武装勢力により連れ去られた。一方、イタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ首相が撤兵を拒否した後、イタリア人人質の1人の殺害が公表された。 4月15日 - 7日からサラヤ・ムジャヒディンにより拘束されていた日本人3人が、午後になってバグダッド市内で解放され、ムスリム・ウラマー協会により保護された。 4月17日 - 14日から拘束されていた日本人ジャーナリスト2人が、バグダッドのモスクで解放され、保護された。外務省は、自民党内に一部反対論があったが、救出費用の一部を被害者に請求した。
家族と支援者の動き
被害者と事件以前から近い関係にあった北海道の支援者たちは、「自衛隊の即時撤退」を求めた。
小泉首相は面会を求められたがそれを拒否した。 被害者家族のひとりは、「外務省職員」に謝罪と感謝を表した[1]。 3人の支援者たちは、北海道の高橋はるみ知事が提供した北海道東京事務所に待機していた [1]。 報道により、3人の無事が確認された時点で、支援者たちは、喜びにあふれ、歓声があがった。現地で支援してくれたイラク国民と、日本の支援者に対して、感謝の気持ちが伝えられた。
世論の反応
3人の無事救出を求めて家族が「自衛隊撤退」を政府に要請した為、一部の国民が反発し抗議の声が上がった。また一部に虚偽のタクシー呼び出しや、被害者宅へ悪戯電話や中傷内容の手紙を送りつけるなどの嫌がらせがあった。一方で、被害者家族が折鶴を送られるシーンなどもあった。数日後、一部世論の反応を見た家族は、一転して「謝罪」を前面に出す対応に変化する。
このことに対して自己責任をキーワードとする多くの意見が、マスコミ・政治家・評論家から発せられた。事件解決後も、外務省の費用請求に対して、一般的な請求額では「戒めにならない」とする声が上がった。しかし、米国やフランスを中心とした諸外国のメディアなどからは自己責任論を強調する日本政府の姿勢に対し批判の声が上がった。
3人の支援者達は、このような被害者への非難にたいして、NGOや民間のジャーナリストが危険を冒してでも現地に赴くことは、戦争被害者の側に立った活動や報道を行い、日米政府が隠そうとする実態を明らかにする上でも必要である旨の反論をした。
今回の事件をうけて朝日新聞が行った世論調査によれば、自衛隊派遣継続関しては支持50%・不支持32%である一方、政府による撤退拒否の姿勢を73%が支持する結果となり、「派遣には反対だが、誘拐犯の要求は飲むべきではない」とする国民の存在も浮かび上がった。
また共同通信・毎日新聞・日経新聞の内閣支持率調査は各社前回調査時より軒並み上昇した。(朝日新聞は同時点での調査をしていない)
最初の3人が解放された直後の4月16日に、ある新聞のサイトに3人の住所が掲載されてしまい、それがインターネットの匿名掲示板に書き込まれ、3人の自宅には中傷の手紙が大量に送り付けられた。「プライバシーの重大な侵害」と判断した札幌法務局が掲示板の管理者に削除を依頼し、3人の住所は21日までに削除された。
怪情報
事件直後にネットワーク上の掲示板などに、事件は「自作自演」だ、との情報が流れ始めた。事件がまだ未解決の段階に、事件は所詮「自己責任」であるとの論調が流れ始めた。 雑誌メディアには、「自作自演」情報や、「自己責任」意見は、官邸周辺からの情報操作であるとの記事が掲載された。一部には「某新宗教による扇動」との見方もある。このような「自作自演」説が盛んにネット上で吹聴された前例として、「建国義勇軍」事件がある。ところが、23日には「自己責任論」を強調していた自民党の一部議員の年金不払い(年金未納問題)が発覚し、世論の矛先はあべこべに不払い議員へ向けられてしまった。
関連項目
イラク戦争 自衛隊イラク派遣