カオス理論
カオス理論 (かおすりろん) は、決定的な動的システムが、初期状態によって様々な反応を起こすような現象を扱う理論である。多くの場合、対象となるシステムが様々なふるまいをするのは、その振る舞いをあらわす方程式の非線形性のためである。そのようなシステムには、自然界において観察できるシステム(大気、プレートテクトニクス)や、社会的なシステム(経済、人口増加)などがある
カオス理論の成立は1960年代に遡る。
従来、科学は自然を細かい要素に分解することで単純化し、単純な系の振る舞いについて解析的に記述してきた。そして実際に観察される複雑な事象は、単純な事柄が積み重なった結果であると解釈してきた。
しかし近年、非線形な特性を持つ系は単純であっても一見乱雑な振る舞いをすることが明らかになり、自然現象それ自体が非線形な特性を持つために複雑な振る舞いをするものと解釈するべきとの考え方が強くなってきた。このような系をカオスと呼ぶ。
カオスの例はそれこそ無数にある。立ち上る湯気の描く軌跡もカオスであるし、生物の生息数の変化もカオス、株価の変動もカオスである。コーヒーに落としたミルクが時間と共に描く模様もまたカオスである。
カオスな系の特徴は初期値への鋭敏な依存性が本質であるといえる。すなわち、同じように実験を始めても初期条件がわずかに違っただけで時間とともにその差は増幅され、いつしかまったく違った結果となってしまうのである。初期値の測定には誤差がつきものである以上、カオスな系の未来の予測は完全にはできないと言うことになる。 天気予報が当たらないのも、まさにこのためだと言ってよい。
カオスの特徴
単純な数式から、ランダムに見える複雑な振る舞いが発生する 初期値のごくわずかなずれが、将来の結果に甚大な差を生み出す(バタフライ効果) 過去の観測データから将来の予測が不可能である
カオスの例
ロジスティック写像- 二次方程式を用いた写像
- をロジスティック写像と呼ぶ。もともとロジスティック方程式という連続時間の微分方程式として、19世紀から知られていたが、写像として時間を離散的にすることで、極めて複雑な振舞いをすることが1976年ロバート・メイによって明らかにされた。
- ロジスティック写像は生物の個体数が世代を重ねることでどのように変動していくのかのモデルとして説明される。ここでa(下図の横軸)が繁殖率、Xn(下図の縦軸)がn世代目の個体数を表している。
- *繁殖率a<3のとき 個体数Xnはある一定の値に収束する。
- *3≤a≤3.56995のとき Xnが2つの値を繰り返す様になる。さらにaを増やすとXnのとる値が4つ、8つと増加していく。この周期逓倍点の間隔は一定の比率ファイゲンバウム定数で縮まる。
- *3.56995nのとる値に規則性が見られなくなる。この境界値3.56995をファイゲンバウム点と呼ぶ。周期逓倍点の間隔が0に収束し、周期が無限大に発散したのである。
- この様に単純な二次方程式から複雑な振る舞いが発生し、またa=4付近では初期値X0のわずかな違い(例えば0.1と0.1000001)が将来の値Xnに決定的な違いをもたらしている。
| 横軸はaを、縦軸はXn収束する値を表している。a=3で2値の振動へと分岐し、更に分岐を繰り返していくことが分かる。 |