ドイツ語
ドイツ語(Deutsche Sprache) はインド・ヨーロッパ語族のうち西ゲルマン語系に属する言語の一つ。 使用人口は世界で約1億2千万人で、そのうち約9千万人が母語としている。独逸語と書かれることがあり、しばしば独語、独などと略称される。
使用地域
公用語としてはドイツ、オーストリア、リヒテンシュタインで使われているほかベルギー、スイス、イタリア、ルクセンブルクでも他の言語と併用で公用語となっている。公用語以外としてはフランスでエルザス・ロートリンゲン州を中心に120万人が使用し、東ヨーロッパで広く使用されているほか、ドイツ人口の多いブラジルで150万人、パラグアイで16万人が使用するなど南米でも広く使用されている。またカザフスタンには95万人、シベリアにも76万人のドイツ語話者がいる。
歴史
「ドイツ語」という語は786年 theodiscus というラテン語型で初めて文献に登場するが、これは「民衆の」という意味を表す古高ドイツ語の形容詞 diutisc から派生している。ドイツ語は時代順に750年から1050年までが古高ドイツ語、1050年から1350年までが中高ドイツ語、1350年から1650年までが初期新高ドイツ語、1650年から現代までが新高ドイツ語、とおよそ四つの段階に分類されている。
ドイツ語の原型となるフランク族の使用していた言語は、「第一回音韻遷移」と呼ばれる子音体系の変化によって古代ゲルマン語から分化し、紀元前2~3世紀ころに完成していただろうと考えられている。紀元後500年ころ第二回音韻遷移が起こり、高地ドイツ語と低地ドイツ語の差異が明確になった。この遷移によって古高ドイツ語は形を整え、9世紀初めには叙事詩『ムースピリ』や『ヴェッソブルンの祈祷書』などが古高ドイツ語によって記述されている。文語としてはいまだラテン語が優位を占めていたこの時代にあってザンクト・ガレンの僧侶ノートカーらが旧約聖書の詩篇などのドイツ語訳を試み、徐々にドイツ語の基礎が固められていった。
11世紀に入るとドイツ語による文献は増え、僧侶に代わって宮廷の騎士たちが言語の担い手となってきた。ミンネザングと呼ばれる吟遊詩人たちは自らの詩がなるべく広く理解されるよう、多くの方言の共通点を集約してドイツ中部より内陸部で大多数に通じるような中高ドイツ語を形成した。中高ドイツ語は古高ドイツ語と比べて母音が減少し、語尾の変化も単純になっているが、まだ新高ドイツ語よりは複雑なものだった。
中世末期から流布した民衆本は分かりやすいドイツ語で書かれていたが、まだ正書法もなく地方ごとに独自のやり方で表記していた。初期新高ドイツ語は表記にも一定の法則性を与える方向に向かって形成され、1522年ころ完成したマルティン・ルターのドイツ語訳聖書によって大きく発展した。
17世紀にはドイツ人の民族としての自覚が高まり、知識人の間では統一されたドイツ語を求める国語浄化運動が盛んになった。この思潮はロマン主義の時代に引き継がれ、グリム兄弟による辞書の編集やコンラート・ドゥーデンの正書法辞典などによって新高ドイツ語が形成された。しかし1998年8月1日に導入された正書法についてはいまだに論議があり、グリム兄弟の辞書が完成したのは着手から100年以上経った1961年だったことも考えると、他の全ての言語と同じように、ドイツ語もいまだ形成過程にあると言えるだろう。
文字
英語と同じラテンアルファベットに変母音(ウムラウト; Ä,ä, Ü,ü, Ö,ö) とエスツェット (ß) を加えた30文字を使用する。なおßは語頭に来ることがないため、大文字は無い。ウムラウトやエスツェットが表示できないときは、Ä→Ae, ä→ae, Ü→Ue, ü→ue, Ö→Oe, ö→oe, ß→ss と代用表記することになっている(なお、ßをβ(ベータ)とは書くべきではない)。| ドイツ語アルファベット | |||||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | W | X | Y | Z | Ä | Ö | Ü | |
| a | b | c | d | e | f | g | h | i | j | k | l | m | n | o | p | q | r | s | t | u | v | w | x | y | z | ä | ö | ü | ß |
文法
人称代名詞
()内は同義の英語| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | ich - 私 ( I ) | wir - 私たち (we) |
| 2人称 | du - 君 (you) Sie - あなた(敬称) | ihr - 君たち (you) Sie - あなたたち(敬称) |
| 3人称 | sie - 彼女 (she) er - 彼 (he) es - それ(it) |
sie - 彼等/彼女等 (they) |
- 敬称2人称は必ず大文字で始める(1人称単数は文頭の時だけ大文字で始めればよい)。
動詞(Verb)
主文の定動詞は原則としてに文の構成要素の内、2番目におかれる。しかし、疑問文や命令文の中には1番目におかれるものもある。英語とは異なり、主語が最初に来ないこともあり、その場合主語は3番目以降となるが、原則として省略はされない。尚、助動詞などが文の2番目におかれる場合は、動詞が文の一番最後に置かれて枠構造を作る。ドイツ語の動詞は、法、態、時制、人称、数に従って屈折する。 動詞は規則変化する動詞と不規則変化をする動詞に分かれる。 人称および数に従う変化は規則変化する場合が多い。
規則動詞
例として「学ぶ」という意味の規則動詞 lern-en (語幹-活用語尾)を使って活用等を示す。動詞の3基本形
- ;不定詞:語幹+en
- (lernen)
- ;過去基本形:語幹+te
- (lernte)
- ;過去分詞:ge+語幹+t
- (gelernt)
直説法
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | -e (lerne) | -en (lernen) |
| 2人称 | -st (lernst) | -t (lernt) |
| 3人称 | -t (lernt) | -en (lernen) |
敬称の2人称 (Sie) に付く場合、3人称複数と同様lernen と活用する。
接続法第I式
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | -e (lernte) | -en (lernen) |
| 2人称 | -est (lernest) | -et (lernet) |
| 3人称 | -e (lerne) | -en (lernen) |
過去形
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | - (lernte) | -(e)n (lernten) |
| 2人称 | -st (lerntest) | -t (lerntet) |
| 3人称 | - (lernte) | -(e)n (lernten) |
seinの活用
seinは、ラテン語のsum, esse, fui、フランス語のêtre、イタリア語のessere、英語のbeなどに相当するものである。日本語では「ある」と訳されることもある。動詞の3基本形
- ;不定詞:sein
- ;過去基本形:war
- ;過去分詞:gewesen
直説法
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | bin | sind |
| 2人称 | bist | seid |
| 3人称 | ist | sind |
敬称の2人称 (Sie) に付く場合は、3人称複数と同様 sind と活用する。
接続法第I式
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | sei | seien |
| 2人称 | sei(e)st | seiet |
| 3人称 | sei | seien |
過去形
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | war | waren |
| 2人称 | warst | wart |
| 3人称 | war | waren |
habenの活用
habenは、フランス語のavoir、イタリア語のavere、英語のhaveなどに相当するものである。日本語では「持つ」と訳されることもある。動詞の3基本形
- ;不定詞:haben
- ;過去基本形:hatte
- ;過去分詞:gehabt
直説法
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | habe | haben |
| 2人称 | hast | habt |
| 3人称 | hat | haben |
敬称の2人称 (Sie) に付く場合、3人称複数と同様 haben と活用する。
接続法第I式
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | habe | haben |
| 2人称 | habest | habet |
| 3人称 | habe | haben |
過去形
| 単数 | 複数 | |
| 1人称 | hatte | hatten |
| 2人称 | hattest | hattet |
| 3人称 | hatte | hatten |
名詞(Substantiv)
名詞は必ず大文字から始まる。また、男性・女性・中性の性を持ち、それぞれ男性名詞(Maskulinum (m.) - ein männliches Substantiv)・女性名詞(Femininum (f.) - ein weiblich Substantiv)・中性名詞(Neutrum (n.) - ein neutrales Substantiv)という。冠詞(定冠詞と不定冠詞)
| 男性 | 女性 | 中性 | |
| 定冠詞 | der Vater | die Mutter | das Kind |
| 不定冠詞 | ein Vater | eine Mutter | ein Kind |
格変化(Deklination)
| 男性 | 女性 | 中性 | ||
| 1格 | der Vater | die Mutter | das Kind | 主格 - N格 Nominativ (Nom.) |
| 2格 | des Vaters | der Mutter | des Kindes | 属格 - G格 Genitiv (Gen.) |
| 3格 | dem Vater | der Mutter | dem Kind | 与格 - D格 Dativ (Dat.) |
| 4格 | den Vater | die Mutter | das Kind | 対格 - A格 Akkusativ (Akk.) |
形容詞(Adjektiv)
gutでの変化例強変化(形容詞+名詞)
- 定冠詞(類)と同様の強い変化(男性・中性2格は名詞が変化するで弱い変化)
| 男性 | 女性 | 中性 | ||
| 1格 | guter Vater | gute Mutter | gutes Kind | 主格 - N格 Nominativ (Nom.) |
| 2格 | guten Vaters | guten Mutter | guten Kindes | 属格 - G格 Genitiv (Gen.) |
| 3格 | gutem Vater | guten Mutter | gutem Kind | 与格 - D格 Dativ (Dat.) |
| 4格 | guten Vater | gute Mutter | gutes Kind | 対格 - A格 Akkusativ (Akk.) |
弱変化(定冠詞(類)+形容詞+名詞)
- 定冠詞(類)が格変化するので弱い変化
| 男性 | 女性 | 中性 | ||
| 1格 | der gute Vater | die gute Mutter | das gute Kind | 主格 - N格 Nominativ (Nom.) |
| 2格 | des guten Vaters | der guten Mutter | des guten Kindes | 属格 - G格 Genitiv (Gen.) |
| 3格 | dem guten Vater | der guten Mutter | dem guten Kind | 与格 - D格 Dativ (Dat.) |
| 4格 | den guten Vater | die guten Mutter | das gute Kind | 対格 - A格 Akkusativ (Akk.) |
混合変化(不定冠詞(類)+形容詞+名詞)
- 基本的に不定冠詞が格変化し弱い変化、不定冠詞が弱い変化の所(男性1格・中性1格・中性4格)のみ強い変化
| 男性 | 女性 | 中性 | ||
| 1格 | ein guter Vater | eine gute Mutter | ein guter Kind | 主格 - N格 Nominativ (Nom.) |
| 2格 | eines guten Vaters | einer guten Mutter | eines guten Kindes | 属格 - G格 Genitiv (Gen.) |
| 3格 | einem guten Vater | einer guten Mutter | einem guten Kind | 与格 - D格 Dativ (Dat.) |
| 4格 | einen guten Vater | eine guten Mutter | ein gutes Kind | 対格 - A格 Akkusativ (Akk.) |
関連項目、外部リンク
Europas-Mitte.DE - Deutschsprachige Gemeinden(ドイツ語を話すコミュニティーについて) 言語の分類一覧 インド・ヨーロッパ語族