千夜一夜物語
千夜一夜物語(せんやいちやものがたり、Alf Layla wa Layla)は、アラビア語でまとめられた全169編の説話物語集である。インドの影響を受けて中世イランで編まれたものを起源とし、物語の核はイスラム初期の時代にペルシア語からアラビア語に翻訳されたものであるとされる。13世紀から14世紀頃にシリア地方でおおよそ現在の体裁に整い、15世紀から16世紀頃のマムルーク朝治下のエジプトでいくつかの物語が付け加えられて現在よく知られた姿になった。現存する最古の写本はエジプト系写本以前のシリア系に属する写本である。
18世紀初頭にフランスのアントワーヌ・ガランがヨーロッパで最初に「発見」し、おそらくシリア系の写本を使ってフランス語訳を行い、ヨーロッパに広く紹介された。以来、さまざまな翻訳と翻案が積み重ねられ、アラブ文学の枠に留まらない大きな文学ジャンルと言えるほどの作品になっている。
日本では1875年に早くも英語版からの翻訳が行われ、以来英語・フランス語などのさまざまなバージョンからの重訳が行われ、有名な説話は児童文学に翻案されて親しまれてきた。原典アラビア語からの翻訳は前嶋信次による平凡社東洋文庫版『アラビアン・ナイト』がある。
名称
千夜一夜物語は、日本語では千一夜物語、アラビアン・ナイトとも呼ばれている。
原書名のアルフ・ライラ・ワ・ライラ(Alf Layla wa Layla)は、alfが「千」、laylahが「夜」の意味で、waが接続詞であるから、直訳すると『千夜と一夜』であり、千一夜では厳密な訳とは言えないようである。また、通称のアラビアン・ナイトと言うのは、この物語が初めてイギリスに紹介されたときの題名がArabian Nights Entertainments であったことに由来している。
内容
妻の不貞を見て女性不信になったシャフリヤール王が国の若い女性と一夜を過ごしては殺していたのを止めるため、大臣の娘シャハラザードが自ら王のもとに嫁ぎ、千夜に渡って毎夜王に話をしては気を紛らわさせ、終に殺すのを止めさせたという物語が主軸となっている。説話は、船乗りシンドバード(シンドバッド)のような実在の冒険商人たちをモデルにしたであろう架空の人物からアッバース朝のカリフ、ハールーン・アッ=ラシードのような実在の人物まで様々な登場人物が登場し、官能的な説話や戦争ものや空想的な架空の物語など多彩な物語を繰り広げる。
説話はイラン、アラブ、インドなど広い地域から集められたとみられ、中世イスラム世界の社会背景が生き生きと書き出されている。
有名な『アラーウッディーン(アラジン)の魔法のランプ』と『アリー・ババ(アリ・ババ)と40人の盗賊』の話は当時主に流通していた写本にはなく、18世紀のフランス語版の翻訳者アントワーヌ・ガランが付け加えたとされてきた。しかし、20世紀になってから、ガランの時代より古いとされるこれらの挿話の写本が発見された。(この写本はフランス語版からの逆翻訳で、偽物だという主張もある)また、千夜一夜物語は、成立後もさまざまな作家によって新たに挿話が付け加えられ、原典であっても複数のテキストがあることに注意する必要がある。