力の統一理論
力の統一理論(ちからのとういつりろん)とは、様々な力を統一しようとする理論のこと。最終的には自然界の四つの力をすべて統一しようという理論的試みである。自然物理学の歴史は力の統一の歴史といってもよい。アイザック・ニュートンは天体の力と地上の力を万有引力として統一した。つまり天体の重力も地上の重力も同様なニュートンポテンシャルをもつ運動方程式であらわせる。ジェームズ・クラーク・マクスウェルは電気力と磁気力を電磁気力として統一した。つまり、電流や時間変動する電場は磁場を生じ、時間変動する磁場は電場を生じる。
さらにスティーヴン・ワインバーグ、アブドゥス・サラムは電磁気力と弱い力を電弱統一理論として統一した。この意味は、「電荷をもつ素粒子は必ず弱超電荷もあわせもつ」理論形式になっているということで、つまりふつうの電荷の定義に弱超電荷(アイソスピン)演算子の第3成分が含まれている。このような電弱の不可分な関係は実験事実に基づくが、数学的には非可換な2×2行列であらわされる。ただしこの電弱統一理論に強い力の理論を加えた標準模型では、電磁気力と弱い力、強い力の結合定数はそれぞれ異なり、合計3つある。
ところで「統一」という言葉は別の意味で使われることもある。つまり、各々の力の結合定数は現在観測されうる限りの低エネルギー領域では異なるが、ある高エネルギーの点で同一の値になると期待されている。繰り込み理論によれば結合定数がエネルギーに依存することを利用して、このような理論を構成する試みがある。この流れで電磁気力、弱い力、強い力の三つが大統一理論として統一されようとしている。しかし最も単純で美しいSU(5)ゲージ群に基づく大統一理論は、陽子崩壊が現在までのところ一例も観測されていないという実験事実と矛盾し、すでに否定されている。そこで超対称性を仮定することによって修正した超対称大統一理論も未完成ではあるが、20年以上前から考えられている。これらは重力相互作用をのぞいた三つの力をすべて統一しようという試みである。
いっぽう、素粒子の世界では効果が小さすぎて観測の困難な重力も含めて、4つの力をすべて統一しようという試みは、世界中の理論物理学者がこぞって研究しているにも拘らず、現在のところまだ完成にはほど遠い。これは、重力相互作用のゲージ粒子である重力子が繰り込み不可能であることに起因している。
しかし、物質の基本的な構成物である素粒子を「点」とせず、ある種の「ひも」とすればこの問題は解決できるかもしれないことがわかった。(なお、この「ひも」は宇宙論における「宇宙ひも」とは別の概念である)。この弦理論で超対称性を仮定したものを「超ひも理論(超弦理論ともいう)」という。
現在、具体的な超ひも理論として、5種類のモデルが数学的に可能であることが知られている。そして5つのモデルを11次元時空の理論である「M理論」なるもので統一しようという試みが、プリンストン高等研究所で研究中のエドワード・ウィッテンを初めとする、世界中の理論物理学者たちでなされている。M理論の場合、素粒子はひもではなく二次元の膜として扱われる。
この理論が完成すれば、素粒子のあらゆる性質が説明できるばかりか、宇宙(=時間と空間)が誕生し、消滅する様子さえも理解できる、究極の物理理論になると期待されている。
もっとも微小な素粒子の理論を巨大な時空スケールでのみ確立されている一般相対論、とくに検証困難な(初期)宇宙論にそのまま外挿して適用することの論理的是非はあまり真剣に議論されていないようである。実験的には、結合定数がひとつになる必然性はない。素粒子の標準模型が非常に高い精度で確立されていて、この有効理論はニュートリノ振動以外ほぼすべての(加速器)実験の結果を説明できる。
参考文献
『図解雑学 素粒子』 二間瀬敏史(著)、ナツメ社『素粒子物理』 戸塚洋二(著)、岩波書店
『ゲージ場の量子論1、2』 九後汰一郎 (著)、培風館
『ゲージ場の理論』 藤川和男(著)、岩波書店
『場の量子論1~4』 S. Weinberg(著)、青山秀明、 有末宏明(共訳)、吉岡書店