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哺乳類

哺乳綱
Mammalia
分類
界: 動物界
門: 脊索動物門
亜門: 脊椎動物亜門
綱: 哺乳綱
亜綱/下綱
原獣亜綱 • 獣亜綱 • 後獣下綱
(有袋類 ) • 真獣下綱
(有胎盤類 )

哺乳類は、動物界 脊索動物門 脊椎動物亜門 哺乳綱(ほにゅうこう)に属する生物の総称である。 で子を育てる。

哺乳類に属する動物の数は、研究者によって変動するが、おおむね4,300から4,600ほどであり、脊索動物門の約10パーセント、広義の動物界の約0.4パーセントにあたる。

語源

(哺乳類)という言葉は、1758年、「分類学の父」リンネによる『自然の体系』第10版においてはじめて用いられた。ラテン語の字義は「乳房の」を意味する。
「哺乳類」という呼称は、ドイツ語の (哺乳類)からの訳語。saugen(母乳を飲む)とTier(動物)に由来している。「哺」は、口でとる(捕)、あるいは口でささえる(輔)という字の成り立ちから、口にふくむ、食らうことを表すが、口にふくませる、食物を与える意味ともなり、「哺乳」とは(哺乳びん、哺乳期などと言うように)乳を飲ませて育てることである。

哺乳類の進化

哺乳類の起源は意外に古く、古生代に繁栄した単弓類 Synapsida(哺乳類型爬虫類)から三畳紀後期に進化したキノドン類 Tricuspes である。 単弓類は、爬虫類の双弓類 Diapsida とは石炭紀中期に分岐し、独自の進化をしていた。 単弓類の繁栄はペルム期末の大量絶滅で終了し、哺乳類へつながる系統以外の全ての種が絶滅した。

恐竜の全盛時代であるジュラ紀白亜紀の哺乳類はネズミほどの大きさのものが多かった。 しかし進化が停滞していたわけではない。白亜紀前期には、すでに有胎盤類が登場している。

約6400万年前、恐竜等の大型爬虫類が絶滅する。次の新生代、そのニッチを埋めるように哺乳類は爆発的に放散進化し、多種多様な種が現れた。

現在では地中や水中などを含め、地球上のほとんどの環境に、哺乳類が生息している。

形態的・生態的な特徴

基本的な特徴 • メスが乳腺をもち、育児期には乳汁を分泌して子に与える。 • 鳥類と同じく、体温を一定に保つ恒温動物である。 • 一般に、体表を覆う体毛をもち、体温の発散を防いでいる(クジラ類では、ハクジラ類が、胎児期にのみ、頭部の一部にわずかな毛をもつ)。(現生爬虫類は体毛をもたず、鳥類では羽毛が体表を覆う) • 原獣亜綱の種(現存はカモノハシ目の3種のみ)は卵生だが、それ以外の現生種(獣亜綱)はすべて胎生である。 • 原獣下綱、後獣下綱の種は、体外部の育児嚢で子を育てる。真獣下綱の種は、体内の胎盤で子を育てて出産する。

歯・骨格以外の特徴(化石では確認しにくい) • 肋骨と共同して肺呼吸を可能にする横隔膜をもち、これが胸腔と腹腔とを分けている。(他の動物群にない特徴) • 心臓に2心房2心室をもつ。また、血液の体循環は左大動脈弓のみによる。 • 赤血球は循環系では無核で、その形は円盤状である(ラクダ目では楕円状)。(鳥類等の赤血球は有核) • 肛門と泌尿生殖門(尿と胎児が出てくる孔)は別々に開口する。ただしカモノハシ類は共通の総排出口をもつ。(爬虫類や鳥類も1穴)

歯の特徴 • 一般的にはの数は一定であり、切歯・犬歯・前臼歯(小臼歯)・臼歯(大臼歯)に分化している。ただし、食性により歯の退化したものや、ハクジラ類のように同型歯をもつものもある。(両生類や爬虫類は同型歯であり、鳥類は歯をもたない) • 頬歯(前臼歯と臼歯)は、歯冠に咬頭と呼ばれるふくらみを複数もち、複雑な形をしている。また、頬歯の歯根は2本以上に分岐している。 • 歯の生え変わりは、乳歯から永久歯への1回のみか、または一度も生え変わらない。

骨格の特徴 • 骨は中心部分だけではなく両端からも成長し、若い個体では、それらが軟骨でつながっている(爬虫類では、骨は中心部分からしか成長しない) • 下顎の骨は、1つの歯骨だけでできている。(爬虫類は下顎が複数の骨からなる) • 頭骨と下顎は、側頭鱗(鱗状骨)と歯骨によって関節している。また、鐙(アブミ)骨・砧(キヌタ)骨・槌(ツチ)骨という3個の連続した耳小骨が、鼓膜の振動を内耳に伝える。(爬虫類の顎関節は、方形骨と関節骨からなる。また、爬虫類や鳥類の耳小骨は、鐙骨のみ。哺乳類のみがもつ砧骨と槌骨は、方形骨・関節骨がそれぞれ変化したものである) • 口蓋と鼻道の間に、二次口蓋と呼ばれる板状の骨があり、口と鼻道の間が完全に仕切られている。(爬虫類ではこの分離が不完全) • 頭骨の鼻の穴は1つ。(爬虫類では1対) • 頭蓋の後頭部にある大後頭孔の左右に、頭骨と第一椎骨を間接させる後頭顆を1対もつ。(爬虫類や鳥類は、大後頭孔の下に1個の後頭顆をもつ) • 頚椎を7個もつ。ただし、クジラ目では癒合・分離によって数が変異し、ジュゴン目では6個、アリクイ目では6・9・10個となる。 • 首の部分の肋骨は、すべて頚椎に癒合している。個々の胸椎はゆるく関節し、体を前後左右に曲げるだけでなく、ねじることもできる。また、腹の部分には肋骨がない(体をねじる能力により、メスは寝そべって子どもにミルクを与えることができる)。 • 肩甲骨は脊柱とは関節しておらず(このために前肢の自由な動作が可能となる)、外側の面に肩甲棘とよばれるはっきりした隆起線が前後に走る。(爬虫類の肩甲骨には肩甲棘がない) • 一般的に、の骨の数は親指が2個、その他の指は3個が基本。(爬虫類はこれより多い) • 腸骨・座骨・恥骨の3つが癒合し、1つの骨盤になっている。クジラ類では骨盤そのものが消失している。(爬虫類では3つの骨が分離している)

分類

原獣亜綱

三畳紀に出現。現存はカモノハシ目の一目のみ。卵生。 • カモノハシ目 (単孔目)

獣亜綱

後獣下綱 - 白亜紀後期に出現。胎盤が不完全で、育児嚢で子を育てる。 • フクロネズミ目 - 多目に分けることもある(詳細は後獣下綱 参照)。

真獣下綱 (有胎盤類) - 白亜紀に出現。現在も繁栄。 • アリクイ目 (異節目) - 分布はほぼ南米大陸のみ。 • モグラ目 (食虫目) - 原始的な有胎盤類。 • ツパイ目 (登木目) - 分布は東南アジアのみ。1科 • ヒヨケザル目 (皮翼目) - 分布は東南アジアのみ。1科1属 • コウモリ目 (翼手目) - 種数では全哺乳類の1/4を占める。 • オオコウモリ亜目コウモリ亜目サル目 (霊長目) - 白亜紀に出現。 • キツネザル亜目 (原猿類) • サル亜目 (真猿類) • 広鼻下目 (新世界猿類) • 狭鼻下目 (旧世界猿類) • ネコ目 (食肉目) - 新生代第三紀の初めに出現。 • ネコ亜目 (裂脚亜目) • アシカ亜目 (鰭脚亜目) • ゾウ目 (長鼻目) - かつて繁栄したが、現存は2種のみ。 • ジュゴン目 (海牛目) - ゾウ目の祖先から進化。 • ウマ目 (奇蹄目) • イワダヌキ目 (岩狸目) - 分布はアフリカ大陸のみ、ゾウ目の近縁。 • ツチブタ目 (管歯目) - 現存は1種のみ。 • ウシ目 (偶蹄目) • イノシシ亜目ラクダ亜目ウシ亜目クジラ目 (鯨目) - 始新世偶蹄類の仲間から進化。 • ヒゲクジラ亜目ハクジラ亜目センザンコウ目 (有鱗目) - 全身がマツボックリ状の鱗に覆われている。 • ネズミ目 (げっ歯目) - 種数では全哺乳類の1/2を占める。 • ウサギ目ハネジネズミ目 (長脚目) - 分布はアフリカ大陸のみ、1科。

目名の問題

明治以来、目名には「齧歯目」「霊長目」等、原名のラテン語をおおむね忠実に漢訳した漢名が用いられてきた。だが、1988年、文部省(当時)の『学術用語集 動物学編』において、目以下の名称をすべてカナ書きにし、目名は「ネズミ目」「サル目」のように、それぞれの動物群を代表する動物名(カナ書き)に変えるという改定がなされた。
しかし、たとえば「ネコ目」(食肉目)のネコ亜目とアシカ亜目、イヌ上科とネコ上科のように、亜目、上科のような比較的高い階層の分類階級による動物群は、それぞれ他のグループとは明らかに異なる特有の性質をもつものであり、1つの下位分類群の名前(「ネコ」)によって、目という大きなグループの全体(ネコ・イヌ・イタチ・クマ・アライグマ・パンダ・アシカ・アザラシ・セイウチなどからなる食肉目)を代表させることは、必ずしも直観的なわかりやすさにはつながらない。それゆえに、ラテン名においても、動物の名で代表させた分類単位の名前は、上科よりも下位の分類階級でしか用いられない。
また、以前からの慣用として、どの分類階級であるかにかかわらず、「○○の仲間」を「○○類」と書くことがあるが、かつての漢名ならば、たとえば「齧歯類」と言えば、それが「目」の階層の「齧歯目」を指すことは明らかであり、他の階層との混同のおそれはなかった。それが、「齧歯目」が「ネズミ目」となることによって、「ネズミ類」という言葉が示す可能性のある階層の範囲が目のレベルにまで広がり、混乱が拡大されたという側面もある。
以上のように、この分類名の改定は、分類学の根本理念に対して十分に配慮した上でのものでは必ずしもなく、実際、平易化という所期の目的に部分的にはむしろ逆行する結果を導いていることから、学界内でも現在なお議論が多く、現状では、旧来の漢名をそのまま用いたり、新しいカナ名と併記したりする例も多い。

分類・系統研究の動向

哺乳類の分類は、リンネ以来数百年にわたって、特に「目」以上の単位では、めったに変動することがなかった。 しかし近年、哺乳類の分類学はかつてない勢いで刷新されつつあり、ほんの10年か20年前の知見が、ひどく時代遅れのものとなる状況が生まれている。
この状況を生み出した要因の一つは、南半球を含むさまざまな現場での、化石発掘調査の著しい進展である。たとえば、最古の有胎盤類(真獣類)、エオマイア・スカンソリアの化石は、2002年、中国遼寧省で発見されたが、これにより、この化石の推定年代である1億2500万年前(白亜紀前期)には、すでに原始的な有胎盤類が発生していたことが明らかとなり、有胎盤類の歴史は一気に4000万年さかのぼった。
もう一つの、さらに大きな影響を及ぼした要因は、分子生物学、とりわけ、遺伝子配列解析という新しい手法の出現と流行である。これは、動物の細胞内にあるミトコンドリアDNAにおける塩基配列を調べ、グループごとの類縁関係を、統計学的に明らかにしていく手法である。このアプローチにより、有胎盤類の系統樹は、かつての形態学的な研究によるものとは幾分異なった形で再編成されることになった。

遺伝子研究による分類では、現生の有胎盤類を、系統的に近いと思われるものごとに、「上目」レベルの4つの大グループ(クレード )にまとめている。

• 「アフリカ獣上目 」には、ゾウ、マナティー、ツチブタ、イワダヌキ、ハネジネズミのような動物たちが含まれる。
• 「異節上目 」は、アリクイ目(異節目)のナマケモノ、アリクイ、アルマジロの仲間によって構成される。
• 「ローラシア獣上目 Laurasiatheria」には、ネコ、アザラシ、クジラ、ウマ、コウモリ、モグラが含まれる。
• 「真主齧上目正主齧歯類上目」は、ネズミ目(齧歯目)、ウサギ目、サル目(霊長目)と、ヒヨケザル、ツパイなどからなっている。

この新しい分類は、従来のものとはいくつかの点で大きく異なっている。
たとえば、コウモリの仲間は、解剖学的な特徴から、従来はサル目などと同じ大グループ(上目)に分類されていたが、遺伝子研究から得られた知見によれば、食肉類やクジラと同じ大グループということになる。
また、従来のモグラ目(食虫類)は、トガリネズミやモグラからなるメインのグループから、アフリカに分布するテンレック類とキンモグラ類の小グループが分離されて、前者はローラシア獣類、後者はアフリカ獣類と、2つの異なった上目グループに所属することになった。

今後、分子生物学古生物学の両陣営が、懸隔を乗り越えて歩み寄り、互いに補い合って1つの統一的な体系を作り上げるには、なお多くの議論と譲歩が積み重ねられなければならないだろう。 だが、新しいアプローチである遺伝子研究が、哺乳類の歴史の研究に大きな進展をもたらしつつあることは確かである。
たとえば、哺乳類がさまざまな「目」に分化し始めたのは、従来の化石研究では恐竜絶滅後(約6000万年前)のことと考えられていたが、遺伝子研究によれば、分化そのものは約1億年前にすでに始まっていたとされる。 また、前述の、最古の有胎盤類エオマイアの発見は、原始的な有胎盤類は従来の説よりもずっと早い時期に出現していたはずだとする分子生物学者の主張を、新たに発見された動物化石が裏付ける形となった、幸運な例である。
哺乳類の系統研究は、今まさに、大きな転換期のただ中にあるといえる。




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