公理
公理(こうり)とは、学問を構築する上で前提とされる命題で、証明するまでもなく、自明とみなされるもののことを言う。議論の前提として置かれる一連の公理の集まりを公理系という。
以下にいくつかの公理の例を示す。 命題 P が成立するなら、命題「PまたはQ」も成立する。 2つの点が与えられたとき、その2点を通るような直線を引くことができる(ユークリッド原論を参照)。 a=b なら、a+c = b+cである(ユークリッド原論を参照)。 どんな自然数に対しても、その数の「次の」自然数が存在する(ペアノの公理を参照)。 どんなものも含まないような集合(空集合)が存在する(公理的集合論を参照)。 集合 S の元のうち、ある条件 P(x) を満たすような x だけをとって集合を作ることができる(公理的集合論を参照)。
公理を用いて証明される命題は定理という。 以下に定理の例を示す。 三角形の内角の和は180度である(ユークリッド幾何学を参照)。
ヒルベルト流の形式的数学にとっての公理
ヒルベルト流の形式的数学においては、公理はそれが「自明である」というよりは、数学の議論をする上での1つの仮定であると考える。「数学というゲームをする上での約束事」と考える人もいる。例えば、「三角形の内角の和は180度より大きい」というものはあまり直観的に明らかではないし、それどころか先ほど述べた「三角形の内角の和は180度である」とは矛盾しているが、これは非ユークリッド幾何学においては真なる命題である。「内角の和が180度である」を「180度より大きい」に差し替えることによって、1つの幾何学が構築できることが分かっているからである。詳細は非ユークリッド幾何学の記事を参照のこと。
公理系に要請されるのは以下のようなことである。 ;無矛盾性 :その公理系の公理が互いに矛盾していないこと。 ;独立性 :ある公理が、他の公理を使って導き出せたりはしないこと。つまり、いかなる公理も「余分なもの」ではないこと。 ;完全性 :その公理系からその学問分野に属する命題がすべて証明可能であること。 この条件さえ満たされていれば、どんな奇妙な公理を置いてそのもとで形式的な数学理論を構築してもよい。 ただし、実際に数学者が扱う公理系は、古典的な意味での公理のように何らかの意味で「自明」な事柄に由来していたり、様々な歴史的経緯から定められたものであることが多い。
そういった由来を持たない、あまりにも突拍子のない公理系は、それが無矛盾であるように作るのが難しい割に何かの役に立つことが少ない。そのため、その公理系に関心を抱く者も少なく、数学の分野として認められづらい。
関連項目
形式主義 公理的集合論 ダフィット・ヒルベルト ヒルベルト・プログラム 演繹