内積
数学において、内積(ないせき、スカラー積とも)とは、ベクトル空間上で定義される、非退化(かつ正定値の)対称双線型形式(あるいはエルミート双線型形式)のことである。一つのベクトル空間に定義される内積は一つとは限らない。
ある内積 <·, ·> に対して
定義
体 K を実数体 R または複素数体 C (あるいは四元数体 H)とするとき、K 上のベクトル空間 V に対して、以下の性質を満たす 2 変数の関数 <·, ·>: V × V → K である。 V の任意の元 x に対して、<x, x> は正の実数で、<x, x> = 0 ⇔ x = 0 。 任意のスカラー α, β ∈ K と V の任意のベクトル x1, x2, y に対して、
- <αx1 + βx2, y> = α<x1, y> + β<x2, y> 。
性質 1 の前半を正値性あるいは正定値性といい、後半を正則性という。性質 2 は内積が第一の変数について線型であるということである。性質 3 は対称性といわれ、これと性質 2 から、内積は第二の変数についても線型となることがわかる(つまり内積は双線型写像である)。
係数体が複素数体 C (あるいは四元数体 H)であるとき、性質 3 の代わりに
エルミート対称性: <x, y> = < y, x>* ( "*" は複素共役(あるいは四元数の共役))
を満たすなら、エルミート内積(あるいは四元数のエルミート内積)という。エルミート内積を単に内積と呼ぶことも多い。
正則対称双一次形式
一般の体 K 上のベクトル空間 V に対し、V 上の対称双一次形式、、対称双線型形式あるいは内積とは、次の性質を満たす二変数の写像 f: V × V → K のことである: 双線型性: f(x + y, z) = f(x, z) + f(y, z), f(x, y + z) = f(x, y) + f(x, z), f(cx, y) = f(x, cy) = cf(x, y) 対称性: f(x, y) = f(y, x)
for all x, y, z ∈ V, c ∈ K 。ただし、内積と呼ぶときは、多くの場合さらに 非退化性: [f(x, β) = 0 for all β ∈ V ⇔ x = 0] かつ [f(α, y) = 0 for all α ∈ V ⇔ y = 0]。 が仮定されている。すなわち、非退化双線型形式のことを内積と呼ぶのである。
非退化性は正則性とも呼ばれ、非退化な内積であることを強調して、非退化内積あるいは正則内積という場合が稀にある。ただし、普通は "内積の非退化性" というときは、双線型形式としての非退化性の話である。
今述べた意味での内積は、f の像 Im f ⊂K が順序体であって、次の条件 正値性: f(x, x) ≥ 0 (for all x ∈ V) をみたすとき、正値あるい正定値(正確には半正値あるいは半正定値)であるといい、正値あるいは正定値である内積のことを正値内積あるいは正定値内積という。
冒頭で述べた意味での内積は、今述べた意味での(非退化な)正値内積になっている。また、複素ベクトル空間(あるいは四元数上のベクトル空間)では、双一次形式をエルミート双一次形式(あるいは四元数のエルミート形式)にとりかえてエルミート内積に到達する。
例
n 次元実ベクトル空間 において、任意の二元 x = (x1, x2, ..., xn), y = (y1, y2, ..., yn) に対し、- とすると、この <·, ·> は(正定値な)内積の性質を満たす。これを、Rn の標準内積と呼ぶ。
- この内積を利用してベクトルのなす角が定義できる。
- また、n 次の(正定値)対称行列 A を用いて
- とおくと、これも(正定値)内積の性質を満たす。
- を取ると、内積の性質を満たす。
内積に関連する定理等
コーシー・シュワルツの不等式
関連項目
計量ベクトル空間 外積
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