振り子式車両
振り子式車両(ふりこしきしゃりょう)とは、曲線通過時に車体を傾斜させることにより、通過速度の向上と乗り心地の改善を図った鉄道車両。日本と欧州で幅広く採用されている。
システム
車両が曲線を通過するときの遠心力は、線路を内側に向けて傾斜(カント)を付けることにより打ち消すことができる。しかし、高速で運転される場合にはカントだけでは遠心力をうち消せなくなくなるため、車体を傾斜させることによって補う工夫がなされた。振り子式車両は遠心力をリンク、コロ等を通じて伝達することによって傾斜させる自然振り子式と、センサーによって遠心力を検知して油圧などにより傾斜させる強制式に大別される。前者は日本で、後者は主に欧州で普及している。
1990年代には自然振り子式から、線路の位置情報をATS車上子が検知、曲線進入前から徐々に車体を傾斜させ、揺れ戻す制御付き自然振り子式が実用化され、JR各社がこぞって採用した。また、空気バネ台車の枕バネの空気圧を左右で変えることにより、より簡易な構造で安価に車体傾斜機能が付与された車両も登場している。
日本
国鉄時代に、591系試験電車で試作され、その後、381系電車が量産された。コロ軸支持式の自然振り子式を採用。本則(曲線による制限速度)+25km/hでの運転が可能になった。伯備線・紀勢線・中央西線の特急電車として活躍。民営化後は、JR四国が世界初の制御式振り子気動車を実用化。普及に弾みをつけた。
自然振り子式
591系試験電車 381系特急型電車:1971年。国鉄時代から活躍する自然振り子式電車。JR東海からは定期運用が消滅したが、JR西日本では「スーパーやくも」「スーパーくろしお」などで使用中。
制御付き自然振り子式
JR四国2000系気動車:1989年。JR四国の世界初の振り子式気動車。島内各ディーゼル特急で使用。 JR北海道キハ281系気動車(HEAT281):1992年。「スーパー北斗」として使用。 JR四国8000系電車:1992年。JR四国。予讃線電化に伴い「しおかぜ」、「いしづち」に充当されている。レールブレーキによる在来線内160km/hの試験にも使われた。 JR東日本E351系電車:1993年。特急「スーパーあずさ」用。 智頭急行HOT7000系気動車:1994年。京阪神と鳥取を短絡する智頭急行の特急「スーパーはくと」に使われ、従来より大幅なスピードアップを果たした。 JR東海383系電車:1994年。JR東海が381系の後継として開発した制御式振り子列車。操舵台車技術も取り入れられた。 JR九州883系電車:1994年。JR九州初の振り子車両。インテリア・エクステリアとも独特のデザインが特徴。特急「ソニック」に使われている。 JR北海道キハ283系気動車(FURICO283):1995年。「スーパー北斗」、「スーパーおおぞら」に使用。 JR西日本283系電車:1996年。紀勢線特急「くろしお」系統の更なる速達化のため、JR西日本が自社では最初に開発。「オーシャンアロー」に使用されている。 JR九州885系電車:1999年。特急「かもめ」に投入。 JR西日本キハ187系気動車:2001年。JR西日本が山陰地区内のローカル特急用に開発した。2003年からは岡山と鳥取を短絡する「スーパーいなば」にも使われている。
空気バネ圧制御式
JR北海道キハ201系気動車:1996年。札幌近郊の快速・普通列車で使用されている。強制車体傾斜式。 JR北海道キハ261系気動車(Tilt261):1999年。「スーパー宗谷」で使用。 名鉄1600系電車(パノラマスーパー):1999年。 名鉄2000系電車:2004年。中部国際空港連絡特急用 新幹線N700系電車:JR東海・西日本が次世代新幹線車両に構想中。新幹線では初めて強制車体傾斜機構を搭載する。東海道新幹線の255km/h制限があるカーブを減速せずに270km/hで通過できる。2007年に登場予定。
海外
イタリアのフィアット社(現アルストム)やスイスのABB社が油圧シリンダーによる強制車体傾斜方式を開発し、欧州各国に普及した。 イタリア:ETR450, 460, 470, 480 スペイン:TALGO Pendula, ETR490[Aralis] ポルトガル:アルファ・ペンドューラ(ETR460がベース) スロベニア:ETR310 (ICS:Intercity Slovenija) フィンランド:S220(ETR460がベース) スウェーデン:X2000 スイス:ICN フランス:TGV-Pendulare(試作車) ドイツ:ICE-T(ICEの振り子版)、ICE-TD(ICE-T気動車) アメリカ:Acela 中国:新時速(X2000を輸入)
など。
関連項目
ペンドリーノ ユーロスター・イタリア 高速鉄道