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予定説

予定説とは、ペラギウス主義および半ペラギウス主義を否定したアウグスティヌスによる聖寵論「救霊における神からの聖寵の無条件的な必要性」を拡張解釈したとされるもので、主にジャン・カルヴァン(Jean Calvin)によって発展した説。ただし、アウグスティヌスは、聖寵の賦与が人間の功徳に対して無条件で神の意志のみにより、また誤謬なく働くと説いたのであって、聖寵や贖罪の賦与が予定者に限定されるとはまったく説いていない。予定説は、アウグスティヌスを起源とするのではなく、コンスタンツ公会議で排斥されたヤン・フスが起源であると考えられる[1]。 マルティン・ルター(Martin Luther)、ウルリッチ・ツウィングリ(Ulrich Zwingli)らも予定説を認めていたが、カルヴァンの二重予定説とは異なるものとされている。

神の救済は、特定の選ばれた人に限定され、一度救済に与れた者は罪を犯さない、もしくは罪を犯しても必ず赦しに与るとされる。カトリック教会トリエント公会議および東方正教会は、神からの聖寵は救霊に対して無条件に必要であることを認めているが、その聖寵の賦与が予定された者に限定されるとする予定説は異端として堅く排斥している。さらに、予定論の信仰義認における釈義で、殊に 選びの確信 (自分が選ばれた予定者であると確信することこそ真の信仰であるとすること)を説いたことに対し、トリエント公会は誰も特別の啓示なしに神が自分を選んだと知ることはできないと厳しく排斥した。

オランダ改革派のヤコーブス・アルミニウスは特に二重予定説に反対したが、1610年改革派のドルトレヒト会議で異端として排斥された。そしてこの会議において「人間の全面的堕落、無条件的選び、限定的贖罪、選びの召命ににおける不可抗的恩恵、聖徒の堅忍」という、カルヴァン主義の五つの特質が定義された。ここでいう全面的堕落とは人祖原罪を指すが、カルヴァンの著書「キリスト教綱要」によれば[2]、この原罪は聖礼典洗礼によってしても贖罪されることはないと述べてられている。これについてもトリエント公会議で厳しく排斥されている。さらに、カルヴァンの同じ著書では、功徳は神の先行的意志によるとした上で、如何なる功徳も罪に汚れているとした。そのため、不完全な功徳ではなく信仰のみによる義認を説いた。アウグスティヌスの聖寵論では、如何なる功徳も神の聖寵を必要とし、更に信仰においても神の先行的聖寵を必要とすとしている。そして、アウグスティヌスが定義した神の聖寵は誤謬なく信仰や功徳に対して働くとしており、如何なる功徳も罪で汚れ不完全であるというカルヴァンの考えとは異なる。

アルミニウスの思想は、後に普遍救済説として発展し、メソジスト・ウェスレー派やジェネラル・バプテストの間で支持される。また、予定説はオランダのカルヴァン派で発展し、救済の予定が人間の堕落の前とする堕落前予定説と、堕落の後とする堕落後予定説との論争が起こるようになる。

聖書からの解釈

カルヴァンの著書「信仰の手引き」を参考に[3]、予定説に関する聖書からの解釈を一部紹介する。 まず、本文ではマタイ福音書13章1-23節の福音の種を蒔く人の喩えを引用し、予定者と非予定者との差異を述べようとしている。良い土地がいわゆる選ばれた予定者のことであるが、アウグスティヌスの聖寵論において、良い土地は神の聖寵によるものには違いないが、神が万人に対して救う意思があることの否定にいはならない。そのため、福音書の中では福音の種は万人に蒔かれることが述べられている。また、第2コリント2章15-16節を引用し、滅びる者の香りと救われる者の香りについての予定を述べている。そして、ローマ 9章11節を引用しているが、ここでは「自由な選びによる神の計画」と述べられており、限定的ではなく、神の自由意志による選びであることが述べられている。

文献

[1] H. デンツィンガー編集, A. シェーンメッツァー増補改訂, 浜寛五郎訳, “カトリック教会文書資料集 改訂版 : 信経および信仰と道徳に関する定義集,” エンデルレ書店, 1996.
[2] J.カルヴァン 著, 久米あつみ訳, “J・カルヴァン キリスト教綱要,” 日本キリスト教書販売, 2000.
[3] カルヴァン 著, 渡辺信夫 訳, “信仰の手引き,” 新教出版社, 2001.

関連項目

プロテスタント • 特定救済主義 • アルミニウス主義バプテスト派 • 聖定



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