民俗学
民俗学(みんぞくがく)は古代信仰・風習・伝承の残存物の習俗を比較し、人類始原のアニミスティックな思考様式を明らかにする学問である。誕生から、育児、結婚、死に至るまで人間の生活にはさまざまな儀式が伴っている。こうした人生の節目の儀式とは別に、普段の衣食や、地方の祭礼などの中にもさまざまな習俗、習慣、しきたりがある。これらの風習の中にはその由来が忘れられたまま、あるいは時代とともに変化して元の原型がわからないままに行なわれているものもある。民俗学はこうした習俗はすべて近代化以前の残存物であるという前提に立って、これら残存物の綿密な検証を通して人類のアニミスティックな思考様式を解明する学問である。
日本の民俗学の礎を築いた人としては、柳田國男、折口信夫らがいる。日本の民俗学は彼らが、明治時代以降の近代化の中で失われていく明治以前の習俗を調査し、記録することから始まった。農商務省に勤めていた柳田が農村研究に訪れた宮崎県の椎葉村で、宿泊した村長宅で聞かされた狩猟の方法や狩に関する言葉・作法に興味を持ち、帰京後に「後狩詞記」(のちのかりのことばのき)を自費出版したのが最初である。折口信夫の場合は和歌などの文学を主に対象としたので、江戸時代の国学の影響がある。
明治以降に日本で始まった学問の中で数少ない「輸入品でない」学問であると思われているが、これは正しくない。すでに近代化を行っていたイギリスで柳田らと同様の観点から民俗学が18世紀には創始されており、1878年にはG.L.ゴムらによってロンドンに“民俗学協会”が設立されていた。イギリスに留学していた南方熊楠がG.L.ゴム編『民俗学便覧』を持ち帰り、柳田が親交を結んでいた南方熊楠からその書物を借り受けて、それまで余技の道楽ととらえていた民俗学を学問として体型化する道筋をつけたのである。
研究の手法としては、聞き取り調査、フィールドワーク、文書などの記録の観察、建築や日用品から民間伝承まで様々な事物の観察などが用いられることが多い。歴史学、文化人類学、社会学や宗教学などと密接に関連し、また時にひとつの研究が民俗学とそれらの領域とにまたがるものになっていることもある。
研究対象
信仰と慣習(地と天,植物界,動物界,人間,人造物,霊魂と来世,妖怪変化,予兆と卜占,魔術,病気と民間療法) 風習(社会政治制度,通過儀礼,生業と産業,四季の祝祭,遊技・競技・娯楽) 説話・歌曲・俗諺(伝説とお伽話,俗曲・俗謡,諺・謎,諺詩・俚諺)
代表的な民俗学者
柳田國男 折口信夫 宮本常一 澁澤敬三 桜井徳太郎 南方熊楠 レヴィ・ストロース 小松和彦
関連項目
方言学 常民 怪談 野生の思考 構造主義 ハレとケ 都市伝説
外部リンク
日本民俗学会ホームページ 民俗学リンク 民俗学専門古書わらべ