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日本国憲法第29条

日本国憲法第29条は、財産権について規定した条文である。1項は、財産権が不可侵であることを、2項は、財産権の内容は法律事項であることを、3項は、国家は私有財産を公共のために用いることができるが、それに対して正当な補償を行うべきことを規定している。

条文

• 財産權は、これを侵してはならない。 • 財産權の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 • 私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

英文

• The right to own or to hold property is inviolable. • Property rights shall be defined by law, in conformity with the public welfare. • Private property may be taken for public use upon just compensation therefor.

判例

規定の意義

適用例

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法-工作物収去土地明渡等請求事件 (最高裁判所 平成15年(オ)第129号、平成15年(受)第141号 平成15年11月27日 第一小法廷判決 棄却)、いわゆる象のオリ訴訟

「第2 上告代理人〔・・・〕の上告理由第1点について
1 所論は,附則2項及び特措法15条に規定する暫定使用は,憲法29条3項にいう「公共のために用ひる」に該当しない旨主張する。
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安全保障条約」という。)6条,日米地位協定2条1項の定めるところによれば,我が国は,日米地位協定25条に定める合同委員会を通じて締結される日米両国間の協定によって合意された施設及び区域を駐留軍の用に供する条約上の義務を負うものと解される。我が国が,日米安全保障条約に基づく上記義務を履行するために必要な土地等を所有者との合意に基づき取得することができない場合に,当該土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であることを要件として(特措法3条),これを強制的に使用し,又は収用することは,条約上の義務を履行するために必要であり,かつ,その合理性も認められるのであって,私有財産を公共のために用いることにほかならないものというべきである(最高裁平成8年(行ツ)第90号同年8月28日大法廷判決・民集50巻7号1952頁参照)。
 そして,駐留軍の用に供するため所有者若しくは関係人との合意又は特措法の規定により使用されている土地等で,これを引き続き駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であるとの要件(特措法3条)に該当すると内閣総理大臣が認定したものにつき,防衛施設局長がその使用期間の末日以前に特措法14条の規定により適用される土地収用法39条1項,47条の2第3項の規定による裁決の申請及び明渡裁決の申立てをしたが,当該使用期間の末日以前に必要な権利を取得するための手続が完了しない場合において,その手続の完了に必要な期間に限って,引き続きこれを使用することができるものとすることも,上記の条約上の義務を履行するために必要であり,かつ,その合理性も認められるのであって,私有財産を公共のために用いることに該当するものというべきである。
 所論は,土地等の使用が憲法29条3項にいう「公共のために用ひる」の要件に該当するためには,収用委員会等の中立公正な機関によって当該土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であることについて事前に判断された場合,又は暫定使用をすることにつき緊急性が存する場合に限られる旨主張する。  しかしながら,当該土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であるか否かの判断,すなわち,特措法3条所定の要件を満たすか否かの判断は,我が国の安全と極東における国際の平和と安全の維持にかかわる国際情勢,駐留軍による当該土地等の必要性の有無,程度,当該土地等を駐留軍の用に供することによってその所有者や周辺地域の住民などにもたらされる負担や被害の程度,代替すべき土地等の提供の可能性等諸般の事情を総合考慮してされるべき政治的,外交的判断を要するだけでなく,駐留軍基地にかかわる専門技術的な判断を要するものであることから,その判断は,特措法5条の規定により,内閣総理大臣の政策的,技術的な裁量にゆだねられているものというべきである(前記大法廷判決参照)。したがって,上記の点について収用委員会等の他の機関による事前の判断を経ることを要し,これを経るか又は緊急性が存しなければ憲法29条3項にいう「公共のために用ひる」の要件に該当しない旨の論旨は,独自の見解であって,採用することができない。
 以上の点は,前記大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。
 2 所論は,附則2項及び特措法15条の規定による暫定使用に伴う損失の補償が,事前の補償を行うものではないので,憲法29条3項にいう「正当な補償」に該当しない旨主張する。  そこで,上記暫定使用に伴う損失の補償に係る関係規定をみるに,附則2項及び特措法15条1項の規定による土地の暫定使用をするためには,防衛施設局長が,あらかじめ損失の補償のための担保を提供することが必要であり(同項),この担保の提供は,暫定使用の期間の6月ごとに,あらかじめ自己の見積もった損失補償額に相当する金銭を供託して行うものとされ,その見積額は,当該土地の暫定使用前の直近の使用に係る賃借料若しくは使用料又は補償金の6月分を下回ってはならないものとされており(同条2項),防衛施設局長は,土地所有者等の請求があるときは,損失の補償の内払として担保の全部又は一部を取得させるものとしている(同条4項)。また,暫定使用によって土地所有者等の受ける損失の補償については,暫定使用の時期の価格によって算定しなければならず(特措法16条1項),収用委員会は,明渡裁決をする場合には,併せて暫定使用による損失の補償を裁決しなければならない(同条2項)。そして,明渡裁決において定められた当該土地等の明渡しの期限までに補償金の払渡し又は供託がされないときは,明渡裁決は,その効力を失う(特措法14条,土地収用法97条,100条2項)。
 憲法29条3項は,補償の時期については何ら規定していないのであるから,補償が私人の財産の供与に先立ち又はこれと同時に履行されるべきことを保障するものではないと解すべきである(最高裁昭和23年(れ)第829号同24年7月13日大法廷判決・刑集3巻8号1286頁参照)。そして,上記関係規定が定める暫定使用及びこれに伴う損失の補償は,その補償の時期,内容等の面で何ら不合理な点はないから,憲法29条3項に違反しないものというべきである。このことは,上記大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。
 3 以上のとおりであるから,附則2項及び特措法15条の各規定は,憲法29条に違反するものではない。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができ,論旨は採用することができない。」

「第4 同上告理由第3点について
所論は,附則2項及び特措法15条は,上告人Aが有していた所有権に基づく本件第1土地の明渡請求権及び上告人A以外の上告人らが有していた使用期間の末日の翌日を始期とする所有権に基づく本件第2土地の明渡請求権を,事後的に消滅させるものであり,憲法29条に違反し,憲法39条に規定する法の不遡及の原則に違反する旨主張する。
 附則2項及び特措法15条に基づく暫定使用は,平成9年一部改正法の施行後に,その定める一定の要件を満たした場合に,同法施行後の一定の時点(附則2項前段の場合は「当該使用期間の末日の翌日」,同項後段の場合は「当該担保を提供した日の翌日」)を起点として将来に向かって発生するものであり,遡及効を定めたものではないから,上告人らの法の不遡及の原則に違反する旨の上記違憲主張は,その前提を欠くものである。また,上告人らは,上記暫定使用が憲法29条に違反するとも主張するが,上記暫定使用が憲法29条に違反しないと解すべきことは,前記のとおりであり,論旨は,いずれも採用することができない。」




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