版画
版画(はんが)とは、印刷を行なう紙以外に彫刻や細工を施した版を作り、インクの転写・透写等によって複数枚の絵画を製作する技法、またはそれにより製作された絵画のこと。版画はその版の仕組みから大きく4つに分類される。凸版画、凹版画、平版画、孔版画である。凸版画は版の凸部に付いたインクが紙に刷られるもので、紙版画、木版画、芋版画など一般にも一番制作経験があるものである。江戸時代の日本で盛んに広がり、東洲斎写楽、葛飾北斎、喜多川歌麿など世界的に知られる浮世絵も木版画の一種で、色ごとに版を使う多版多色版画である。
凹版画は塩化ビニール板や銅板にニードルなどで引いた溝の中にインクをすり込み、それを紙に写す原理である。溝の付け方にも様々な方法があり、大まかに直接法と間接法に分かれている。
直接法としては、ニードルなどで直接、銅板などに溝を刻むドライポイントや、一度バリッシャーなどで細かく規則正しく目立てて黒く刷り上がる素地を作っておいてから、さらに深く絵を刻んでゆくメゾチントがある。メゾチントでは刷り上がりが黒い素地の中から白い階調の絵が仕上がるので、ヨーロッパでまだ写真技術のない頃、肖像画や細密描画の代わりとして人気があった。ドライポイントは手軽にできる反面、摩耗しやすいという欠点がある。
間接法としては、銅板に防食剤としてラズンを一面に塗り、描きたい部分をニードルで剥がし、塩酸で腐食させるエッチングがある。塩酸を使うため、手軽にできないが、腐食させるための時間を長くすると、より深い溝になってはっきりした線になり、時間を短くすると淡い調子になるなど、工夫次第で複雑な描画ができるので奥が深い。
平版とは石版画、リトグラフと呼ばれているもので、油が水をはじく原理を利用している。19世紀頃、ヨーロッパで偶然から原理が発見され、以降ロートレックなどの画家が斬新で芸術性の高いポスターをこの方法で描いた。以前は巨大な石に描いていたが、近年は扱いやすいアルミ板を使うことが多い。専用のアルミ板などに油分の強いチョーク、クレヨン、ダーマトグラフなどで描き、アラビアゴムや薬品を塗って、版を作る。注意する点は版にインクを塗る際、版が常に水で濡れていなければならないことである。紙に刷る度に、インクと水分が紙に移るので、版にインクを盛る前に必ず水で版を濡らす必要がある。そうしないとすぐに白いままにしておきたい部分にインクが付いてしまい、版が駄目になる。
孔版は版に穴を開け、穴の開いた部分にインクが通り、下の紙に刷られる方法である。ステンシル、シルクスクリーンなどがある。シルクスクリーンの作り方にも直接穴をカッターで開けてゆくカッティング法と冷暗室で溶剤を版に塗ってから、直接絵を描いた透過性のある紙を乗せて、上から強い光を当てて版に穴を開ける、写真製版法がある。