This article at Wikipedia

群論

群論ぐんろん)は代数学の一分野。様々な手法を用いてについて研究する。群はそれ自体興味深い考察対象であるのみならず、数学物理学の議論をするための基本的な道具として広く使われる。

この記事では、アーベル群可換群)、群の位数有限群部分群正規部分群剰余群商群)、群の凖同型同型について順次説明している。

群とは

ぐん)とは、「この範囲では自由に掛けたり割ったりの計算ができる」という範囲(集合)を表す抽象的な概念である。数学的に厳密な定義は#群の定義を参照。

例えば、(0 を除く)有理数は、どの 2 つの数をとってきてもその 2 つの積や商を考えることができ、また積や商は有理数の内に収まっている。従って(0 を除く)有理数の全体は普通の意味での数の掛け算について群になっている。しかし、有理数ではなく整数に限ってみるとそうではない。実際、1 を 2 で割ろうとすると整数の範囲では割り切れずに有理数 1/2 になってしまう。従って(0 を除く)整数の全体は普通の数の掛け算について群ではない。

数以外の物の集まりについても何か適切な形で積を定義してやることができれば群となる。

有理数のような具体的な対象物から離れて抽象的に「掛け算のできる集合」を扱うことにより、演算が生み出す構造について純粋に議論することが容易になる。また、数の掛け算というようなイメージにとらわれることなく様々なところに群とみなせる構造を見出すことができ、応用を考えることも容易になる。

抽象的な群の概念を考えることの効用としてムルンギン族の婚姻体系への適用が挙げられる。オーストラリア・アボリジニのムルンギン族は、独特の婚姻体系を持っており、結婚しても良い間柄、許されない間柄を定める規則が西洋日本のものとは全く異なっていた。この体系は厳密だがとても複雑なものであったので、発見したクロード・レヴィ=ストロースにとっても把握は困難に思われた。1945年レヴィ=ストロースからこの話を聞いたアンドレ・ヴェイユは、許される婚姻の型を決定する規則が群をなしていることなどを発見し、群論を活用して体系を解明した。

数学と文化人類学の邂逅

群の定義

通常の定義

積(二項演算、二項算法a × b が定義された空でない集合 G が以下の 3 つの条件を満たすならば、Gである; • 積 × に関する結合法則が成立する; (a × bc = a ×(b × c) (for all a, b, cG)。 • 単位元 e が存在する; a × e = e × a = a (for all aG) • G の任意の元 a に対しその逆元 a-1 が存在する; a × a-1 = a-1 × a = e

• 任意の積 a × bG の中に存在する; a × bG (for all a, bG)。 を定義に入れることは上記の方法では必要ない;なぜならば、二項演算が定義されているという部分に含まれているからである。

さらに見かけの条件を減らすこともできる。2, 3 の条件を弱めて

a = e × a(左単位元の存在) a-1 × a = e(左逆元の存在)
だけを仮定しても、a × e = a, a × a-1 = e が成り立つことが示されるので、結局同じことになる。右単位元と右逆元の存在を仮定しても同じである。

演算の記号 × は普通省略されて a × b は単に ab と書かれる。

恒等式による定義

空でない集合 G に二項算法 a×b と単項算法 a -1 が定義され、これらが次の三条件をみたすとき、 G は群である。 自由群について説明する際には、こういう定義に従う方がよい場合がある。 • (a×bc = a×(b×c) (for all a, b, cG) • (a -1×ab = b (for all a, bG) • a -1×a = b -1×b (for all a, bG)

いろいろな群

• 群が任意の元 a, b に対して
a × b = b × a
を満たすとき、この群のことをアーベル群(可換群)という。アーベル群の演算は + を用いて加法的に書くのが慣例である。 • 整数有理数実数複素数は全て加法に関してアーベル群をなす。 • また有理数、実数、複素数から 0 を除いたものは乗法に関してアーベル群をなす. • (実数係数の)n正則行列全体の集合はどの行列逆行列を持つから群になる。この群のことを GLn(R) と表し、n 次の一般線型群 (general linear group) と呼ぶ。 • さらに、どの行列の行列式も 1 であるような行列全体も群をなす。この群を SLn(R) と書き、n 次の特殊線型群 (special linear group) と呼ぶ。 • 直交行列全体も群をなす。この群を On と書き、直交群 (orthogonal group) と呼ぶ。これは、n 次元ユークリッド空間において、長さを変えないような変換全体のなす群である。直交行列の行列式は ±1 である。行列式が 1 であるような直交行列全体からなる群を SOn と書き、特殊直交群 (special orthogonal group) と呼ぶ。 • 複素数係数の行列に対しても同様な群が定義できる;その時、直交行列の類似物としてユニタリー行列を考える。直交群に対応するものはユニタリー群 Un であり、特殊直交群の類似物は特殊ユニタリー群 SUn になる。 • 集合 1, 2, ..., n の上の置換(全単射)全体は、単位元を恒等写像、逆元を逆写像とすることで群になる。この群を n 次の対称群 (Symmetric group) といい、Sn と表記する。

群の基本的な概念

位数

G の元の数(基数)のことを位数という。位数は集合に倣って |G| という記号で表される。位数が有限な群を有限群という。上の例では、最後の対称群の位数が n! となることを除いて、すべて位数は無限になる。

部分群

G の部分集合 HG の群演算に関して閉じていて、H のどの元にも逆元が H の中に存在するとき、この部分集合 HG部分群という;これは H の任意の元 a, b に対して ab-1H が成り立つことと同値である。

G が群であれば、G および e(単位元のみからなる群、単位群)は必ず G の部分群になる。これらを自明な部分群という。それ以外の部分群は、自明でない部分群あるいは真の部分群と呼ぶ。(真の部分群に単位群を含める場合もある。)

部分群 N が群 G の任意の元 g に対して gNg-1 = N を満たすとき、N正規部分群という。

アーベル群 G の任意の部分群は正規部分群である。また、群 G が自明でない正規部分群を持たないとき、G単純群であるという。

剰余類・剰余群

部分群 HG の元 g について、gH はある G の部分集合になる。二つの g, g' について gH, g'H は全く一致するか交わらないかのいずれかである。従って、
直和に書き表せる。それぞれの gH を (H を法とする g の属する G の) 剰余類(または傍系)という。|gH| = |H| が成り立つので結局 |G| = |Λ||H| が成り立つ。G が有限群ならばこれは H の位数が G の位数を割り切るということをいっている(ラグランジュの定理)。|Λ| を [G: H] とか (G: H) などと書いて H の(G に対する)指数という。

N を正規部分群とするとき gN = Ng が成り立つ。すると、二つの剰余類 gN, hN について gN · hN = ghNN = ghN が成り立ち、剰余類の間に演算を定義することができる。ここからすぐにこの剰余類全体は群をなすことが分かる。この群を GN による剰余群(または商群)といい、G/N と表す。

群の準同型・同型

G1 から群 G2 への写像 f が任意の G1 の元 g, g' について f(gg' ) = f(g)f(g' ) を満たすとき、f準同型(写像)という。(G1 = G2のときは特に自己準同型という。)さらに準同型 f全単射であれば、f同型(写像)という。G1 から G2 への同型が存在するとき、G1G2 は同型であるといい、
と表す。

G の自己同型(G から G への同型写像)全体の成す集合を Aut(G) と表すと、 Aut(G) は写像の合成を積として群となる。Aut(G) を G自己同型群と呼ぶ。

準同型の Ker fG1 の正規部分群になっていて、

が成り立つ。これを(群の)準同型定理という。

G の任意の元 g に対し、写像 Lg: GG, Rg: GG, Ag: GG

Lg(x) = gx
Rg(x) = xg-1
Ag(x) = gxg-1
(for all xG) で定めると、この 3 つの写像は全て G の自己同型を定める。特に Ag の形で得られる自己同型を G内部自己同型と呼び、G の内部自己同型全体の成す集合を Inn(G) と表す。Inn(G) は Aut(G) の正規部分群であり、Inn(G) を G の内部自己同型群と呼ぶ。さらに剰余群 Out(G) = Aut(G)/Inn(G) を外部自己同型群とよび、その元を外部自己同型という。

G の二つの元 x, y に対し、y = Ag(x) = gxg-1 となる gG が存在するとき、xy は互いに共役であるという。同様に、部分群 H, K に対し、H = gKg-1 となる gG が存在するなら、二つの部分群 H, K は互いに共役であるという。

G の部分群 N が正規部分群であることと、NG の任意の内部自己同型で不変であることは同値である。さらに N が Aut(G) の作用で不変なら NG特性部分群であるという。

可解群・交換子群

G が、 G の正規部分群の有限列 H1, H2, ..., Hr で 2 条件
G = H0H1H2 ⊃ … ⊃ HrHr+1 = e
Hi/Hi+1 (0 ≤ ir) は全てアーベル群
を満たすもの(アーベル的正規列)を持つとき、G可解群であるという。

代数方程式が代数的に可解となることと、その方程式のガロア群が可解群となることは同値である。このことが可解群の名の由来である。

また、可解群の定義は次のように述べることもできる(両者の定義は同値):

G の部分群 D(G) を

D(G) = <xyx-1y-1 | x, yG>
と定め、H1 = D(G), H2 = D(H1), ... と帰納的に G の部分群 Hi を定めるとき、Hr = e となる自然数 r が存在するならば G を可解群と呼ぶ。

一般に、xyx-1y-1xy交換子と呼び、[x, y] であらわす。さらに G の部分群 H, K に対し、[h, k] (hH, kK) の形の元で生成される G の部分群を [H, K] で表し、HK交換子群という。

この記号を用いれば、D(G) = [G, G] であり、これを G交換子群と呼ぶ。D(G) は G の特性部分群、したがって特に正規部分群である。すぐに分かるように、D(G) = eG がアーベル群となることに同値である。したがって、剰余群 G/H がアーベル群となるなら HD(G) であり、自然に G/HG/D(G) と見なせるので、G/D(G) は G の剰余アーベル群の中で最大のものになる。よって G/D(G) を G最大剰余アーベル群と呼ぶ。

スタブです。

群論の生い立ち

4 次方程式までは代数的な、すなわちべき根による解の公式が存在するがことがわかっていたが(カルダーノ、フェラーリ)、5 次以上の方程式に解の公式が存在するのかどうかはわかっていなかった。群論は、この問いに対しての解を追求する過程において、エヴァリスト・ガロアによって導入された考え方である。ガロアは群論を利用して、5 次以上の方程式には解の公式が存在しないことを証明した(ガロアの理論)。ただしこの業績そのものはルフィニまたはアーベルに帰せられる。ガロアの業績は、与えられた方程式が代数的に解くことができる条件を、可解群の概念を用いて定式化したことにある。

群の種類

• リー群(連続群) • ローレンツ群 • 空間群 • 結晶点群 • 磁気空間群(シュブニコフ群) • 磁気点群 • 灰色群

関連項目

数学代数学物性物理第一原理バンド計算ガロアアーベル • 佐竹一朗




This article is from Wikipedia, the Free Encyclopedia. All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.


社会 • 社会政治経済産業交通教育歴史福祉医療環境環境問題市民活動平和軍事 • 芸術と文化 • 芸術文化言語宗教遊び趣味伝統芸能文学音楽美術演劇映画アニメ漫画建築スポーツゲームギャンブル食文化ファッションマスメディア出版新聞放送テレビラジオ • 世界 • 世界アジアアフリカオセアニア北アメリカ南アメリカヨーロッパ • 日本 • 日本北海道東北関東中部近畿中国四国九州沖縄 • 学問 • 学問文学哲学倫理学心理学社会学法学経済学数学物理学化学生物学地球科学医学工学 • 自然 • 自然宇宙元素気象災害海洋生物植物動物鉱物 • 技術 • 技術コンピュータネットワークエレクトロニクスバイオテクノロジー • 資料 • 索引年表365日地図世界各国関係記事人名一覧一覧の一覧