言語
言語(げんご)
定義
狭義には、人間のコミュニケーション、相互作用を統べる規則の内、声にまつわる部分、あるいはその声の代替としての文字表記などにまつわる部分を指す。手話、トーキング・ドラムなどの例においても、おおよそ声によるコミュニケーションと対応している。より広義には、視覚言語、ボディー・ランゲージなど声によるコミュニケーションに還元できない場合にも、コミュニケーションを統べる規則があれば、それを言語と呼ぶことがある。また、動物の間の相互作用にも言語の存在を認める場合がある。但し、人間の多くの言語と比べ、動物の相互作用には、往々にして恣意的な規則(「リンゴ」という音がリンゴという果物の種類を指すという約束事など)が乏しく、生息環境や生与の能力に根ざしたやや必然性の高い表現手段が関与している場合が多い。(「歯をむき出すこと」が「相手に対する敵意」の表現となる、など)これは規則ではなく、単なる規則性である点でやや趣を異にする。同じく、広義の言語の中に含まれることが多いのがコンピューターのプログラミングに際して参照される一連の規則(プログラミング言語)である。プログラムの機能は、コミュニケーションの一種であると考えることは不可能ではないとしても、典型的な人間の会話において言語が果たす機能と明らかに異なっている。また、規則が特定少数の人間によって決定されている点で狭義の言語と異なる。このため、プログラミング言語のように創作された言語を人工言語と呼び、日本語のような自然言語と区別する場合もある。
自然言語
厳密には、言語の定義には多くの困難が伴う。コミュニケーションの「規則」がどこかに明記されており人々がそれを参照しながらコミュニケーションが行われるわけではなく、実際人々が単一の規則に従っていないと考えさせる材料もある。方言のような地理的なバリエーション、新語の普及のような歴史的変化、言い間違いや言いかけに終わる発言など、文法として通常考えられる規則に反する発話などが、その例として考えられる。また、「声」を基礎とし、文字をその代替とする発想に対する批判を投げかける立場(『声と現象』)もある。(言語哲学)
自然言語は母語として使用する人々の存在を前提として存在しているため、民族の滅亡や他言語による吸収によって使用されなくなることがある。このような言語は死語と呼ばれ、死語が再び母語として使用される例はほとんどない。
世界に存在する自然言語の一覧は言語の分類一覧を参照。
世界の言語
言語の数と範囲の不確定
現在世界に存在する言語の数は、千数百とも数千とも言われるが、数えることは不可能である。これは、未発見の言語や、消滅しつつある言語があるためだけではなく、言語を数えることに原理的な困難があるためである。似ているが同じではない「言語」が隣り合って存在しているとき、それは一つの言語なのか、別の言語なのか。この問いは、「言語」なのか「方言」なのか、と言い換えてもよい。さらに、ある人間集団を「言語の話者」とするか「方言の話者」とするかの問題でもある。
同じ言語かどうかを判定する基準として、相互理解性を提唱する考えがある。話者が相手の言うことを理解できる場合には、同一言語、理解できない場合には別言語とする。相互理解性は言語間の距離を伝える重要な情報であるが、これによって一つの言語の範囲を確定しようとすると、技術的難しさにとどまらない困難に直面する。一つは、Aの言うことをBが聞き取れても、Bの言うことをAが聞き取れないような言語差があることである。もう一つは、同系列の言語が地理的な広がりの中で徐々に変化している場合(言語連続性または方言連続性という)に、どこで、いくつに分割すべきなのか、あるいはまったく分割すべきでないのかを決められないことである。
こうした困難に際しても、単一の基準を決めて分類していくことは、理屈の上では可能である。しかしあえて単一基準を押し通す言語学者は現実にはいない。ある集団を「言語話者」とするか「方言話者」とするかには、政治的・文化的アイデンティティの問題が深く関係している。どのような基準を設けようと、ある地域で多くの賛成を得られる分類基準は、別の地域で強い反発を受けることになる。そうした反発は誤りだと言うための論拠を言語学はもっていないので、結局は慣習に従って、地域ごとに異なる基準を用いて分類することになる。
言語と方言の区別について、現在なされる説明は二つである。第一は、言語と方言の区別にはなんら言語学的意味はないとする。第二のものはまず、どの方言もそれぞれ言語だとする。その上で、ある標準語に対して非標準語の関係にある同系言語を、方言とする。標準語の選定は政治によるから、これもまた「言語と方言の区別に言語学的意味はない」とする点で、第一と同じである。この定義では、言語を秤にかけて判定しているのではなく、人々がその言語をどう思っているかを秤にかけているのである。
各国内で国語又は共通語又は公用語となっている言語(地方の公用語を除く全96言語・50音順)
括弧内あるいは付記はその採用国を示している。ひとつの国が複数の公用語をもつ場合も多い。また、上で述べられているように、言語と方言の違いは区別することが難しく、発音などを除いて文字や語彙がほとんど同一で方言関係にあると言えるような言語が別の名称で呼称されていることがある。ここではそのような言語を一つの言語として計上する。
アイスランド語(アイスランド) アイマラ語(ペルー、ボリビア) アゼルバイジャン語(アゼルバイジャン) アフリカーンス語(南アフリカ) アムハラ語(エチオピア) アラビア語 アラブ首長国連邦 - アルジェリア - イエメン - イラク - エジプト - オマーン - カタール - クウェート、コモロ - サウジアラビア - ジブチ - シリア - スーダン - ソマリア - チャド、チュニジア - バーレーン - モーリタニア - モロッコ - ヨルダン - リビア - レバノン アルバニア語(アルバニア) アルメニア語(アルメニア) イタリア語(イタリア、スイス、サンマリノ、バチカン) インドネシア語・マレー語 注1(インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ) ヴェンダ語(南アフリカ) ウクライナ語(ウクライナ) ウズベク語(ウズベキスタン) ウルドゥー語(パキスタン) 英語 アイルランド(第2公用語)、アメリカ、アンティグア・バーブーダ、イギリス、インド(補助公用語)、オーストラリア、ウガンダ、ガーナ、ガイアナ、カナダ、カメルーン、ガンビア、キリバス、グレナダ、ケニア(準公用語)、サモア、ザンビア、シエラレオネ、シンガポール、ジャマイカ、ジンバブエ、スワジランド、セイシェル、セントクリストファー・ネービス、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、セントルシア、ソロモン諸島、タンザニア、ツバル、ドミニカ、トリニダード・トバゴ、トンガ、ナイジェリア、ナミビア、ニュージーランド、バヌアツ、バハマ、パプアニューギニア、パラオ、バルバドス、フィジー、フィリピン、ベリーズ、ボツワナ、マーシャル諸島、マラウイ、マルタ、ミクロネシア、南アフリカ、モーリシャス、リベリア、レソト エストニア語(エストニア) オランダ語(オランダ、ベルギー、スリナム) カザフ語(カザフスタン) カタルーニャ語(アンドラ) カンボジア語(クメール語)(カンボジア) ギリシャ語(ギリシャ、キプロス) キルギス語(キルギス) キルンジ語(ブルンジ) キンヤルワンダ語(ルワンダ) グアラニ語(パラグアイ) グルジア語(グルジア) (セーシェルの)クレオール語 (ハイチの)クレオール語 ゲール語(アイルランド) ケチュア語(ペルー、ボリビア) コサ語(南アフリカ) コモロ語(コモロ) サモア語(サモア) サンゴ語(中央アフリカ) シンハラ語(スリランカ) スウェーデン語(スウェーデン) ズ―ルー語(南アフリカ) スペイン語 スペイン、メキシコ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、キューバ、ドミニカ、パナマ、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、ペルー、ボリビア、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、赤道ギニア スロバキア語(スロバキア) スロベニア語(スロベニア) スワジ語(シスワティ語)(南アフリカ、スワジランド) スワヒリ語(ケニア、タンザニア) セルビア・クロアチア語(セルビア語、クロアチア語、ボスニア語)(セルビア・モンテネグロ、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ) ソマリ語(ソマリア) ゾンカ語(ブータン) タイ語(タイ) タジク語(タジキスタン) タミル語(スリランカ、シンガポール) チェコ語(チェコ) チェワ語(マラウイ) 中国語(中国(台湾)、シンガポール) 朝鮮語・韓国語 注2(北朝鮮、韓国) ツォンガ語(南アフリカ) ツバル語(ツバル) ツワナ語(ボツワナ、南アフリカ) ティグレ語(エリトリア) ディベヒ語(モルジブ) デンマーク語(デンマーク) ドイツ語(ドイツ、オーストリア、スイス、ベルギー、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク) トルクメン語(トルクメニスタン) トルコ語(トルコ、キプロス) 南部ソト語(南アフリカ) 日本語(日本) ネパール語(ネパール) ノルウェー語(ノルウェー) パシュトゥー語(アフガニスタン) ハンガリー語(マジャール語)(ハンガリー) (パプアニューギニアの)ピジン英語 (ソロモン諸島の)ピジン英語 ビスラマ語 注3(バヌアツ) ビルマ語(ミャンマー) ヒンディー語(インド) フィリピノ語(フィリピン) フィンランド語(フィンランド) フランス語 カナダ、ガボン、カメルーン、ギニア、コートジボワール、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ジブチ、スイス、セーシェル、赤道ギニア、セネガル、チャド、中央アフリカ、トーゴ、ニジェール、ハイチ、バヌアツ、ブルキナファソ、フランス、ブルンジ、ベニン、ベルギー、マダガスカル(準公用語)、マリ、モーリタニア、モナコ、ルクセンブルク、ルワンダ
ブルガリア語(ブルガリア) ベトナム語(ベトナム) ヘブライ語(イスラエル) ベラルーシ語(ベラルーシ) ペルシア語・ダリー語 注4(イラン、アフガニスタン) ベンガル語(バングラデシュ) ポーランド語(ポーランド) 北部ソト語(南アフリカ) ポルトガル語(ポルトガル、ブラジル、アンゴラ、モザンビーク、ギニアビサウ、カーボベルデ) マケドニア語(マケドニア) マダガスカル語(マダガスカル) マルタ語(マルタ) モンゴル語(モンゴル) ラオ語(ラオス) ラトビア語(ラトビア) リトアニア語(リトアニア) ルーマニア語・モルドバ語 注5(ルーマニア、モルドバ) ルクセンブルク語(ルクセンブルク) ロシア語(ロシア) ロマンシュ語 注6(スイス) ンデベレ語(南アフリカ)
注・その他 注1:インドネシアでのみインドネシア語と呼ばれている。マレー語とは表記も発音もほとんど同じ言語である。 注2:表記も発音もほとんど同じ言語であるが政治体制の違いにより別の言語名で呼ばれている。 注3:バヌアツのピジン英語 注4:イランではペルシャ語、アフガニスタンではダリー語。発音や語彙に若干の違いはあるが表記は同じ言語。国家の違いから別の言語名で呼ばれている。 注5:表記も発音もほとんど同じ言語であるが国家の違いより別の言語名で呼ばれている。 注6:絶滅危惧言語で現在の話者は36,000人ほどである。 ベルギーの公用語のうちフラマン語はオランダ語、ワロン語はフランス語とほぼ同じ言語であり、上の表では同じ言語として扱っている。
普段話されている言語別人口順位
中国語 (約12億6200万人)(1998年) ヒンディー語 (約3億6600万人)(1999年) 英語 (約3億4100万人)(1999年) スペイン語 (約3億2200万~3億5800万人)(1999年) ベンガル語 (約2億700万人)(1999年) アラビア語 (約2億人) ポルトガル語 (約1億7600万人)(1999年) ロシア語 (約1億6700万人)(1999年) 日本語 (約1億2500万人)(1999年) 出典:Ethnologue(アラビア語を除く)
関連項目
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