脂質
脂質(ししつ)とは生物中から単離されて水に溶けない物質を総称したものである。 特定の化学的、構造的性質から分類されるものではなく溶解度によって定義されるものである。1925年にBloorによって以下の生化学的脂質の定義がなされている。 水に不溶、ただしエーテル、ベンゼンなど有機溶剤に溶ける。 加水分解により脂肪酸を遊離する。 生物体により利用される。 ただし、上記の定義は現在では数多くの例外が存在し、十分な条件とは言えない。現在の生化学的定義では『長鎖脂肪酸あるいは炭化水素鎖を持つ生物体内に存在あるいは生物由来の分子』となる。
分類
脂質の分類は以下のようになっている。 脂肪、ワックス - 加水分解されエステル結合を持つ コレステロール - エステル結合を持たず、加水分解されない リン脂質 - リン酸基を持ち、エステル結合を有する グリセロリン脂質 - グリセロール骨格からなる スフィンゴ脂質 - スフィンゴシン骨格からなる ただし、生化学的にはコレステロールを脂質と扱わない場合が多い。リン脂質は更にグリセロリン脂質とスフィンゴ脂質に分けられる。また、古細菌と一部の真正細菌の有する脂質については脂肪酸の結合がエーテル結合となっており、エステル結合を持たないという特徴がある(エーテル型脂質)。
脂肪、ワックス
ワックスとは長鎖脂肪族カルボン酸や長鎖脂肪族アルコールからなるエステルの混合物である。初のワックス(ヘキサデカン酸トリアコンチルエステル)などはにここに分類される。脂肪(しぼう)は直鎖状の脂肪酸とグリセロールのトリエステル体(トリグリセリド、トリアシルグリセロールとも言う)である。脂肪細胞や植物オイルなどの形で天然に存在している。アルカリで加水分解を行うとグリセロールと3分子の脂肪酸を生じるが、一般に脂肪を構成する脂肪酸は同一ではない場合が多い。
コレステロール
コレステロールはステロイドの一種である。コレステロールは脂質二重層の炭化水素内部に存在し、生体膜の流動性を決定する。一般にコレステロールが多いほど膜の流動性は失われる。植物や原核生物はコレステロールを含有しない。
リン脂質
ホスホン酸エステルからなる脂質。リン脂質は一般的に生体膜の脂質二重層構造を取る重要な脂質である。リン脂質は更にグリセロリン脂質、スフィンゴ脂質に分類される。
グリセロリン脂質
グリセロールのsn-1か3位にリン酸が結合し、残る2つのヒドロキシル基に長鎖脂肪酸や炭化水素などが結合している。もっともシンプルなグリセロリン脂質としてはグリセロールにリノレン酸およびステアリン酸の結合したホスファチジン酸などがある。スフィンゴ脂質
グリセロールの代わりにスフィンゴシンが骨格となって炭化水素およびリン酸が結合している脂質である。脳、神経組織に多く分布しており、一部の真正細菌の細胞膜もこの脂質を含有している。
極性脂質
リン脂質などは生体膜の構成にきわめて重要な極性脂質(きょくせいししつ)としての機能を持つ。特にグリセロリン脂質は細胞膜の主要な構成要素である。グリセロリン脂質のイオン部は親水性で水溶液側を向き、炭化水素鎖は疎水性なので内側を向き、疎水基同士で凝集するので脂質二重層あるいはミセルを形成する。単一の分子が親水性、疎水性の両方の性質を持つことを両親媒性(りょうしんばいせい)という。